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中学生のゲーム依存|親ができる対処法から専門治療までを解説

中学生 ゲーム依存 中学生

「うちの子、最近ゲームばかりしている…もしかしてゲーム依存症?」 「注意するとすぐにイライラして、暴言を吐かれる…」 「成績も下がってきたし、このままでは将来が心配…」

中学生のお子さんが昼夜問わずスマホやゲーム機を手放さない姿に、このような深刻な不安を抱えている保護者の方は少なくありません。

思春期という多感な時期と重なり、どう対応すれば良いのか分からず、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。

この記事では、中学生のゲーム・スマホ依存に悩む保護者の方に向けて、依存症かどうかを判断するためのチェックリストから、家庭でできる具体的な対処法、そしておすすめの治療法までを網羅的に解説します。

お子さんの大切な未来を守るため、まずは正しい知識を身につけ、適切な一歩を踏み出しましょう。

もしかして?中学生のゲーム・スマホ依存症診断チェック

お子さんの状態が単なる「ゲーム好き」の範囲を超えているのか、それとも治療が必要な「依存症」のレベルなのか、客観的に判断することが大切です。ここでは、国際的な診断基準と、家庭でできるセルフチェックリストをご紹介します。

WHOが定める「ゲーム障害」の診断基準

2019年、WHO(世界保健機関)は「ゲーム障害(Gaming Disorder)」を正式な病気として認定しました。これは、ゲームに熱中しすぎることで、日常生活に深刻な支障が出ている状態を指します。

WHOが定める診断基準のポイントは以下の通りです。

  • ゲームをする時間や頻度をコントロールできない
    ゲームを始める時間や終える時間、プレイ時間を自分で制御できなくなります。

  • 他の何よりもゲームを優先する
    勉強や部活、家族や友人との交流といった、これまで大切にしていた活動よりもゲームを優先するようになります。

  • 問題が起きてもゲームを続ける
    成績の低下、昼夜逆転、家族との衝突など、ゲームが原因で明らかに問題が起きているにもかかわらず、プレイをやめられない、あるいはさらにエスカレートします。

これらの状態が12ヶ月以上続く場合に「ゲーム障害」と診断される可能性がありますが、症状が重い場合はそれより短い期間でも診断されることがあります。

スマホ依存症のセルフチェックリスト10項目

より身近なスマホやタブレットへの依存度をチェックしてみましょう。お子さんの様子を思い浮かべながら、当てはまる項目がいくつあるか数えてみてください。

  1. スマホやゲームをしていないと落ち着かず、イライラする。
  2. やめようと思っても、つい長時間利用してしまう。
  3. 利用時間をだんだん長くしないと満足できなくなってきた。
  4. スマホのせいで睡眠不足になっている、または昼夜逆転している。
  5. 成績が明らかに下がった、または宿題や提出物を出さなくなった。
  6. 食事中やお風呂、トイレにもスマホを持ち込んでいる。
  7. 家族や友人との会話が減り、スマホの世界に閉じこもりがちだ。
  8. 利用時間について嘘をついたり、隠れて使ったりすることがある。
  9. 注意されると、激しく怒ったり暴言を吐いたりする。
  10. ゲームへの課金がやめられない、または金額が増えている。

5つ以上当てはまる場合は、スマホ依存症の可能性が高いと考えられます。専門家への相談を検討し始める段階かもしれません。

スマホ依存と同時に見られやすい「朝起きられない」「昼夜逆転」の直し方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

中学生に現れやすい依存のサインと症状

中学生は心身ともに大きく変化する時期です。ゲーム・スマホ依存になると、以下のような特有のサインや症状が現れやすくなります。

  • 【生活面の変化】
    • 昼夜逆転し、朝起きられなくなる。
    • 食事を抜いたり、お菓子ばかり食べたりと食生活が乱れる。
    • 入浴や着替えを面倒くさがり、身だしなみに無頓着になる。
  • 【学業・行動面の変化】
    • 成績が急激に低下する。
    • 遅刻や欠席が増え、不登校になる。
    • 部活動や習い事を休みがちになる、またはやめてしまう。
  • 【精神・対人面の変化】
    • ささいなことでイライラし、感情の起伏が激しくなる。
    • 家族との会話を避け、自室に引きこもる。
    • 現実の友人関係が希薄になり、オンライン上の付き合いを優先する。
    • ゲームを注意されると、暴言や暴力的な態度をとる。

これらのサインは、お子さん自身が発しているSOSのサインでもあります。見逃さずに、早期に対応することが重要です。

家庭でできるゲーム依存の治し方・対処法

専門機関に相談する前に、まずは家庭でできることから始めたいと考える方も多いでしょう。ここでは、親子関係を壊さずに状況を改善するための3つのステップと、コミュニケーションのコツをご紹介します。

ステップ1:親子で現状を共有し対話する

最も重要なのは、一方的にゲームを取り上げたり、叱りつけたりしないことです。まずは冷静に、お子さんと向き合う時間を作りましょう。

その際、主語を「あなた」ではなく「私」にする「I(アイ)メッセージ」を心がけてください。

  • 【悪い例( YOU メッセージ)】
    あなたはゲームばかりして、勉強もしないでダメな子ね!」

  • 【良い例( I メッセージ)】
    は、あなたが夜遅くまでゲームをしていて、体のことがとても心配なの。」

非難するのではなく、親として心配している気持ちを素直に伝えることで、お子さんも話を聞き入れやすくなります。

思春期特有の反発への向き合い方については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

ステップ2:具体的なスマホ・ゲームのルール作り

対話を通じて現状を共有できたら、次は親子で一緒にルールを考えます。親が一方的に決めるのではなく、お子さん自身にルール作りに参加させることが成功の鍵です。

ルール作りのポイント

  • 利用時間と時間帯を決める
    「平日は1日1時間まで」「夜9時以降は使わない」など、具体的な数字を決めます。

  • 利用する場所を決める
    「自分の部屋には持ち込まず、リビングだけで使う」など、物理的な制限を設けます。

  • 課金のルールを決める
    「お小遣いの範囲内だけ」「課金はしない」など、金銭的なルールを明確にします。

  • ペナルティとご褒美を決める
    ルールを破った時のペナルティ(例:翌日の利用時間を減らす)と、守れた時のご褒美(例:好きな夕食を作る)を一緒に決めると、モチベーションが維持しやすくなります。

  • まずは簡単な目標から始める
    いきなり「ゲーム禁止」のような厳しいルールは反発を招きます。まずは達成可能な目標からスタートし、少しずつステップアップしていくことが大切です。

ステップ3:ゲーム以外の楽しみを見つける

ゲームに没頭する背景には、「他にやることがない」「現実世界に楽しみがない」という理由が隠れていることが少なくありません。

ゲームに代わるリアルな世界の楽しみを一緒に見つけてあげましょう。

  • 体を動かす活動
    部活動や地域のスポーツクラブ、サイクリング、釣りなど。

  • 創作的な趣味
    イラスト、プログラミング、楽器演奏、料理など。

  • 家族との時間
    一緒にボードゲームをする、週末にキャンプに行く、映画を観るなど。

  • 新しい体験
    ボランティア活動への参加や、短期留学なども視野に入れる。

お子さんが少しでも興味を示したものがあれば、積極的にサポートしてあげてください。

子供の反発を招かないコミュニケーション術

思春期の中学生は、親からの干渉に強く反発することがあります。以下のポイントを意識して、良好な親子関係を保ちながら対話を進めましょう。

  • 傾聴する
    お子さんの言い分や気持ちを、途中で遮らずに最後まで聞きましょう。「ゲームの世界ではヒーローになれるんだ」「学校で嫌なことがあった」など、本音が聞けるかもしれません。

  • 共感する
    「ゲームが楽しい気持ちは分かるよ」「そのキャラクター、かっこいいね」など、まずは一度お子さんの価値観を受け入れ、共感を示しましょう。

  • 人格を否定しない
    「ゲームばかりしているからダメなんだ」といった、お子さんの人格そのものを否定するような言葉は絶対に避けましょう。問題なのは「ゲームにのめり込む行動」であり、お子さん自身ではありません。

専門病院での治療法と全国の相談窓口

家庭での対応だけでは改善が難しい場合や、暴力・暴言がひどく手に負えない場合は、ためらわずに専門家の力を借りることが重要です。

相談すべき診療科は精神科・心療内科

ゲーム・スマホ依存症の相談・治療は、主に精神科心療内科が担当します。近年では「ネット依存外来」や「ゲーム依存専門外来」を設けている病院も増えています。

どこに相談すれば良いか分からない場合は、まずはお住まいの地域にある精神保健福祉センター保健所に電話で問い合わせてみるのが良いでしょう。適切な医療機関や相談窓口を紹介してくれます。

主な治療法:カウンセリングと認知行動療法

医療機関での治療は、薬物療法よりも心理的なアプローチが中心となります。

  • カウンセリング
    専門のカウンセラーとの対話を通じて、お子さんがゲームに依存するようになった心理的な背景(学校や家庭でのストレス、自己肯定感の低さなど)を探り、根本的な問題解決を目指します。

  • 認知行動療法(CBT)
    認知行動療法」とは、物事の受け取り方(認知)や行動のパターンに働きかけて、問題解決を目指す心理療法です。ゲームへの過度な依存につながる考え方の癖を修正し、ゲーム以外の行動を増やすための具体的なスキルを身につけていきます。

  • 集団精神療法
    同じ悩みを抱える他の子供たちと一緒にグループで話し合う治療法です。自分の体験を語ったり、他者の話を聞いたりする中で、自分だけではないという安心感を得たり、問題解決のヒントを見つけたりします。

入院治療が必要なケースと費用目安

以下のような重度のケースでは、入院治療が検討されることがあります。

  • 昼夜逆転が著しく、外来通院が困難な場合
  • 家族への暴力や自傷行為など、本人や周囲の安全が脅かされる場合
  • うつ病や引きこもりなど、他の精神的な問題が深刻な場合

入院治療では、インターネット環境から完全に隔離された状態で、規則正しい生活リズムを取り戻し、集中的な治療プログラム(カウンセリング、SSTなど)を受けます。

費用については、「ゲーム障害」の診断がつけば健康保険が適用されます。高額療養費制度を利用すれば、自己負担額を一定額に抑えることも可能です。ただし、個室代や食事代、一部のカウンセリングなどは別途費用がかかる場合があるため、詳細は各医療機関にご確認ください。

全国の専門外来・公的相談機関リスト

ゲーム・スマホ依存の治療や相談に対応している代表的な機関です。

専門医療機関の例

  • ・国立病院機構 久里浜医療センター(神奈川県)
    日本で初めて「ネット依存治療研究部門」を設立した、この分野のパイオニアです。

  • ・成城墨岡クリニック(東京都)
    思春期・青年期を対象としたネット依存治療を行っています。

  • ・榎本クリニック(東京都)
    アルコールや薬物など様々な依存症治療の実績があり、ゲーム依存にも対応しています。

上記以外にも、全国に専門外来を持つ医療機関は増えています。「お住まいの地域名 ゲーム依存 病院」などで検索してみてください。

公的な相談窓口

  • ・精神保健福祉センター
    各都道府県・政令指定都市に設置されており、無料で精神保健に関する相談ができます。医療機関の紹介も行っています。

  • ・保健所・保健センター
    市町村に設置されており、より身近な相談窓口です。

  • ・児童相談所
    18歳未満の子供に関するあらゆる相談に対応しています。

一人で抱え込まず、まずは電話一本でも相談してみることが、解決への大きな一歩となります。

中学生がゲーム依存に陥る主な原因

なぜ中学生はゲームにのめり込み、依存状態にまで陥ってしまうのでしょうか。その背景には、脳の仕組みや思春期特有の心理が関係しています。

脳の報酬系とドーパミンの関係

ゲームで敵を倒したり、レベルアップしたり、レアアイテムを手に入れたりすると、脳内では「ドーパミン」という快感物質が放出されます。このドーパミンが脳の「報酬系」と呼ばれる回路を刺激し、強い喜びや達成感をもたらします。

この快感が忘れられず、脳がさらに強い刺激を求めるようになり、ゲームをやめられなくなるというのが、依存症の基本的なメカニズムです。

現実世界でのストレスや友人関係の問題

思春期の中学生は、勉強のプレッシャー、友人関係の悩み、親への反発、将来への不安など、多くのストレスを抱えています。

努力しても必ずしも報われるとは限らない現実世界に比べ、ゲームの世界は、頑張ればレベルが上がり、仲間から称賛され、簡単に達成感を得られます。そのため、現実からの逃避先としてゲームに没頭しやすくなるのです。

発達障害(ADHD・ASD)との関連性

ゲーム依存の背景に、発達障害が隠れているケースも少なくありません。

  • 【ADHD(注意欠如・多動症)】
    衝動を抑えるのが苦手な特性から、一度ゲームを始めるとやめ時が分からなくなったり、課金にのめり込んだりしやすい傾向があります。

  • 【ASD(自閉スペクトラム症)】
    特定の物事へのこだわりが強く、過集中しやすい特性から、ゲームの世界に没頭しやすいと言われています。対面でのコミュニケーションが苦手なため、オンラインでの交流を好む傾向もあります。

お子さんの行動が単なるわがままではなく、発達障害の特性によるものかもしれないと感じたら、自己判断せずに専門医に相談することが重要です。

ゲーム依存を放置する深刻なリスク

「そのうち飽きるだろう」と軽く考え、ゲーム依存を放置すると、お子さんの心身や将来に深刻な影響を及ぼす危険性があります。

学業不振・成績低下から不登校へ

ゲームに時間を費やすことで勉強時間が失われるだけでなく、睡眠不足や集中力の低下により、授業の内容が頭に入らなくなります。成績の低下が自己肯定感をさらに下げ、学校へ行く意欲を失い、不登校につながるケースは少なくありません。

ゲーム依存がきっかけで学校から足が遠のくケースは少なくありません。ただ、不登校の「期間がどれくらい続くのか」「いつ改善するのか」といった見通しは、依存だけでは判断できません。
不登校全体の傾向や目安については、こちらの記事が参考になります。

昼夜逆転による心身の健康問題

夜遅くまでのゲームは、体内時計を狂わせ、深刻な昼夜逆転を引き起こします。成長期の中学生にとって睡眠不足は、成長ホルモンの分泌を妨げ、低身長や肥満の原因となるほか、自律神経の乱れから頭痛や倦怠感など様々な身体の不調を招きます。

うつ病や不安障害など精神疾患の発症

ゲーム依存は、うつ病や不安障害といった他の精神疾患を併発するリスクが高いことが分かっています。ゲームの世界に閉じこもることで社会的に孤立し、抑うつ気分が強まったり、将来への強い不安を感じたりするようになります。

家族への暴言・暴力に発展するケース

ゲームを中断させられたり、スマホを取り上げられたりすると、強い離脱症状(禁断症状)から、激しい怒りや攻撃性を見せることがあります。最初は暴言だけでも、エスカレートして物に当たったり、家族に手を上げたりする暴力行為に発展する危険性もあり、非常に注意が必要です。

暴言・暴力を伴うケースへの具体的な対処方法は、こちらでも詳しくまとめています。

中学生のゲーム依存に関するQ&A

保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。

子供が暴れる・言うことを聞かない時の対応は?

まず最優先すべきは、親自身の安全確保です。 お子さんが興奮して暴言や暴力を振るっているときは、何を言っても火に油を注ぐだけです。

  • 物理的に距離をとる
    別の部屋に移動するなどして、冷静になるまでそっとしておきましょう。
  • 刺激しない
    言い返したり、無理にスマホを取り上げようとしたりするのは逆効果です。
  • 冷静になってから話す
    お子さんの興奮が収まり、落ち着いて話せる状態になってから、改めて対話の機会を持ちましょう。

身の危険を感じるほどの暴力がある場合は、ためらわずに警察(110番)や児童相談所虐待対応ダイヤル(189)に相談してください。

治療に健康保険は適用されますか?

はい。WHOによって「ゲーム障害」が国際疾病として認定されたことを受け、日本でも医師が「ゲーム障害」と診断した場合は、その治療に健康保険が適用されます。

ただし、公的保険適用外のカウンセリングなど、一部の治療は自費となる場合もあります。治療を始める前に、医療機関に確認することをおすすめします。

小学生や高校生のゲーム依存との違いは?

依存の根本的なメカニズムは同じですが、年代によって特徴や対応のポイントが異なります。

  • 【小学生】
    まだ親の管理が比較的及びやすい時期です。フィルタリング機能を活用したり、親子で一緒に遊んだりするなど、早期からのルール作りと関わりが重要になります。

  • 【中学生】
    反抗期と重なり、親への反発が最も強くなる時期です。一方的な押し付けは避け、本人を尊重し、対等な立場で対話する姿勢が求められます。友人関係がオンライン中心になりやすいのも特徴です。

  • 【高校生】
    アルバイト代で自由に課金したり、友人宅に泊まってゲームをしたりと、親の目が届きにくくなります。進学や就職といった将来への影響がより深刻になるため、本人の自覚を促し、自己管理能力を高めるアプローチが必要です。

まとめ

中学生のゲーム・スマホ依存は、単なる「遊びすぎ」や「わがまま」ではなく、専門的な対応が必要な「病気」である可能性があります。

この記事で紹介したポイントをまとめます。

  • まずは依存度を客観的にチェックする
  • 家庭では「対話」「ルール作り」「他の楽しみ」をセットで試す
  • 子供の反発を招かないよう、Iメッセージや傾聴を心がける
  • 手に負えない場合は、一人で抱え込まず専門機関に相談する
  • 放置すると、不登校や精神疾患、暴力など深刻なリスクがある

お子さんのゲーム問題に向き合うことは、親にとって非常につらく、根気のいる道のりです。しかし、これは親子関係を見つめ直し、より良い関係を再構築する機会と捉えることもできます。

この記事が、悩める保護者の皆様にとって、解決への第一歩を踏み出す助けとなれば幸いです。

学研WILL学園では、不登校・ゲーム依存・昼夜逆転などのお悩みに対して、専門スタッフが一人ひとりに合わせた“学びと心のサポート”を提供しています。
まずはお子さまの状況を丁寧にお伺いしますので、親子だけで抱え込まず、ご相談ください。

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