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不登校はHSCが原因?特徴と乗り越え方を解説

発達障がい

「うちの子、どうして学校に行きたがらないんだろう…」 「最近よく聞くHSPやHSCって、うちの子にも当てはまるのかもしれない…」

お子さんが学校へ行くことに強いストレスを感じていたり、不登校になったりすると、親としては原因が分からず、どう対応すれば良いか途方に暮れてしまいますよね。

もしかしたら、その原因は「HSC(ひといちばい敏感な子)」という生まれ持った気質にあるのかもしれません。

この記事では、HSCの基本的な特徴から、不登校との関係、そして親子で不登校を乗り越えるための具体的な方法まで、分かりやすく解説します。

お子さんの状態を正しく理解し、適切なサポートを見つけるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

HSC(ひといちばい敏感な子)とは?

まず、HSCという言葉について理解を深めましょう。

HSC(Highly Sensitive Child)とは、生まれつき刺激に敏感で、繊細な気質を持つ子どものことを指します。これは米国の心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された概念です。

重要なのは、HSCは病気や障害ではなく、あくまで個性の一つであるということです。全人口の15~20%、つまり約5人に1人がこの気質を持っているとされています。あなたのクラスにも、数人はHSCの子がいる計算になります。

彼らは、他の人が気づかないような些細なことに気づき、物事を深く考え、共感力が高いという素晴らしい才能を持っています。しかしその反面、外部からの刺激を受けやすく、疲れやすいという側面も持ち合わせているのです。

HSP(大人)とHSC(子ども)の違い

HSCと似た言葉に「HSP」があります。この二つの違いは非常にシンプルです。

  • HSC (Highly Sensitive Child) 子ども(Child)を指す言葉です。
  • HSP (Highly Sensitive Person) 大人(Person)を指す言葉です。

基本的な気質は同じですが、HSCはまだ感情のコントロールや言語化が未熟なため、自分の辛さをうまく表現できません。そのため、周りの大人がその特性を理解し、適切なサポートをしてあげることが非常に重要になります。

4つの特徴「DOES」でHSCを理解する

アーロン博士は、HSCには「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特徴が必ず見られると提唱しています。この4つが揃っていることが、HSCを理解する上での鍵となります。

  • D:Depth of processing(深く処理する)

    物事をじっくり、深く考えます。一つの事柄から多くのことを連想したり、「なぜ?」「どうして?」と次々に問いを投げかけたりすることが多いです。


  • O:Overstimulation(過剰に刺激を受けやすい)

    人混みや大きな音、強い光、たくさんの情報など、外部からの刺激に圧倒されやすいです。他の子にとっては平気な環境でも、HSCの子はすぐに疲れてしまいます。


  • E:Emotional reactivity / Empathy(感情の反応が強く、共感力が高い)

    人の気持ちを敏感に察知し、まるで自分のことのように感じ取ります。友達が叱られていると自分も悲しくなったり、映画や物語の登場人物に深く感情移入したりします。


  • S:Sensitivity to Subtleties(ささいな刺激を察知する)

    他の人が気づかないような、音、匂い、光、人の表情の変化といった些細な違いによく気づきます。服のタグや素材のチクチク感が気になって集中できない、というのもこの特性の一つです。

我が子はHSC?親子でできるセルフチェック

「もしかして、うちの子もHSCかも?」と感じたら、以下のチェックリストを参考に、お子さんの様子を振り返ってみましょう。これは診断ではありませんが、気質を理解するための一つの目安になります。

  • すぐにびっくりする
  • 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
  • 驚かされるのが苦手である
  • しつけは、強い罰よりも優しい言葉かけの方が効果がある
  • 親の心を読む
  • 年齢の割に難しい言葉を使う
  • いつもと違う匂いに気づく
  • ユーモアのセンスがある
  • 直感力に優れている
  • 興奮した後は、なかなか寝付けない
  • 大きな変化にうまく適応できない
  • たくさんのことを質問する
  • 完璧主義である
  • 他人の悲しみに気づきやすい
  • 静かな遊びを好む
  • 物事を深く、真剣に考える
  • 痛みにとても敏感である
  • うるさい場所を嫌がる
  • 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)によく気づく
  • 石橋を叩いて渡るタイプである
  • 人前で発表するような場面では、知っていることでも実力を発揮しにくい

(出典:エレイン・N・アーロン『ひといちばい敏感な子』)

これらの項目に13個以上「はい」がつく場合、お子さんはHSCの可能性が高いかもしれません。たとえ「はい」が少なくても、その度合いが非常に強い場合は、HSCの傾向があると考えられます。

HSCの子が不登校になりやすい理由

では、なぜHSCの子どもは不登校になりやすいのでしょうか。その理由は、HSCの繊細な気質と、学校という環境のミスマッチにあります。

学校の五感を刺激する環境

学校は、HSCの子にとって刺激が多すぎる場所です。

  • 教室のざわめきや、椅子を引く音
  • 突然鳴り響くチャイムの音
  • チカチカする蛍光灯の光
  • 様々な匂いが混じる給食の時間
  • 大勢の人が一斉に動く休み時間

これらの五感への絶え間ない刺激が、HSCの子のエネルギーをどんどん奪っていきます。家に帰るとぐったり疲れているのは、学校で常に神経を張り詰めているからです。

友達との人間関係と集団行動の疲れ

共感力が高く、相手の気持ちを深く読み取ろうとするHSCの子は、人間関係で人一倍疲れてしまいます。

友達の些細な一言に深く傷ついたり、「嫌われたかもしれない」と何日も悩んだりします。また、グループ活動では周りの意見を優先しすぎて自分の意見が言えず、集団の中にいるだけで大きなストレスを感じることも少なくありません。

先生の言葉や他人の感情への過剰反応

HSCの子は、先生が他の子を叱っている声を聞いただけでも、自分が叱られたように感じてしまいます。クラス全体のピリピリした空気や、友達の不機嫌な様子を敏感に察知し、「自分のせいかな?」と自分を責めてしまう傾向があります。

完璧主義と失敗への強い不安

物事を深く考えるHSCの子は、「ちゃんとやらなきゃ」「間違えたらどうしよう」という完璧主義の傾向が強く、失敗を極度に恐れます。

授業での発表やテスト、運動会の練習など、「みんなの前で失敗するかもしれない」というプレッシャーが大きな負担となり、学校へ行くこと自体が怖くなってしまうのです。

HSCの子どもが学校に行けなくなる背景には、環境や人間関係など、さまざまな要因が重なっています。同じように不登校に悩む家庭のケースや、支援の実例を知ることで、少し視野が広がるかもしれません。

不登校を乗り越えるための親の関わり方

お子さんが不登校になったとき、親としてどう関われば良いのでしょうか。焦らず、お子さんのペースに合わせることが何よりも大切です。

まずは心のエネルギーを充電させる

お子さんが「学校へ行きたくない」と言い出したら、それは心と体のエネルギーが空っぽになってしまったサインです。

ここで最も重要なのは、無理に学校へ行かせようとしないことです。まずはゆっくり休み、安心できる環境で心のエネルギーを充電する時間を与えてあげましょう。「学校は休んでもいいんだよ」という親の言葉が、子どもの心を救います。

「安心できる基地」としての家庭環境づくり

学校という刺激の多い場所で戦ってきた子どもにとって、家は唯一の「安心できる基地」であるべきです。以下の点を意識して、家庭環境を整えましょう。

  • 静かな時間と空間を確保する

    テレビを消して静かに過ごす時間を作ったり、一人で落ち着けるパーソナルスペースを用意したりするなど、刺激の少ない環境を心がけましょう。


  • 子どもの「好き」を尊重する

    子どもが好きなことに没頭している時間は、エネルギーを充電している大切な時間です。ゲームでも動画でも、まずはその世界を否定せず、見守ってあげましょう。


  • スキンシップを大切にする

    言葉にしなくても、ハグや頭を撫でるといったスキンシップは、子どもに大きな安心感を与えます。

子どもの自己肯定感を高める声かけ

HSCの子は、不登校になることで「自分はダメな子だ」と自己肯定感が低くなりがちです。親からの肯定的な声かけが、子どもの自信を取り戻す力になります。

  • 結果ではなく過程を褒める

    「100点を取ってすごいね」ではなく、「難しい問題に最後まで取り組んで偉かったね」のように、頑張ったプロセスを具体的に認めましょう。

  • 存在そのものを肯定する

    あなたがいてくれるだけで嬉しいよ」「そのままでいいんだよ」というメッセージを伝え続けましょう。子どもの存在自体が親にとっての喜びであることを伝えることが大切です。


  • 気持ちに寄り添う

    「学校に行けなくて辛いね」「疲れたんだね」と、子どもの気持ちを代弁し、共感する姿勢を見せましょう。

学校との連携と合理的配慮の伝え方

子どものエネルギーが少し回復してきたら、学校との連携を考えましょう。担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、HSCの特性について理解を求めることが重要です。

その際、「合理的配慮」をお願いすることも有効です。合理的配慮とは、障害のある人が他の人と同じように活動できるよう、環境を調整することです。HSCは障害ではありませんが、この考え方を参考に、学校に以下のような配慮を相談してみましょう。

  • 疲れた時にクールダウンできる保健室などの静かな場所を用意してもらう
  • 発表や音読など、人前で緊張する活動を減らしてもらう
  • 座席を刺激の少ない場所(教室の隅など)にしてもらう

HSCの特性を具体的に伝え、子どもがどういう状況で困難を感じるのかを丁寧に説明することが、理解を得るためのポイントです。

学校の中だけでの対応に限界を感じたときは、家庭の外にある“学びの居場所”を検討するのも一つの方法です。お子さんの特性に合った環境を選ぶことで、無理なく学びを続けることができます。

HSCと発達障害(ASD)の違い

HSCと発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)は、感覚が過敏であるなど似た特徴を持つため混同されがちです。しかし、両者には根本的な違いがあります。

気質と脳機能特性という根本的な違い

  • HSC
    生まれ持った「気質」であり、性格の一種です。病気ではありません。

  • ASD
    脳機能の特性による「発達障害」に分類されます。

これが最も大きな違いです。HSCはあくまで健康な人の範囲内での特性ですが、ASDは医学的な診断の対象となります。

共感性の高さで見分けるポイント

HSCの大きな特徴は、他人の感情に深く共感する能力の高さです。相手の気持ちを自分のことのように感じ取ります。

一方、ASDの特性の一つとして、相手の表情や言葉の裏にある意図を読み取ったり、気持ちを推測したりすることが苦手な傾向があります。ただし、これは個人差が大きく、全てのASDの方に当てはまるわけではありません。

感覚過敏の質と対人関係の比較

感覚過敏はどちらにも見られますが、その背景が異なります。

  • HSC

    五感で受け取った情報を深く処理するため、結果として刺激に圧倒されやすくなります。対人関係では、人と関わりたい気持ちはありますが、刺激が多すぎて疲れてしまいます。


  • ASD

    脳の感覚処理の特性そのものに偏りがあり、特定の刺激を苦痛に感じることがあります。対人関係では、そもそも他者への関心が薄かったり、一人でいることを好んだりする傾向が見られることがあります。

両方の特性を持つ場合について

中には、HSCの気質と発達障害の特性を併せ持つ子どももいます。 そのため、見分けるのは非常に難しく、専門家でも判断に迷うことがあります。

「うちの子はどっちだろう?」と悩んだら、自己判断せずに必ず専門機関に相談してください。 正しい理解が、適切なサポートにつながります。

HSC・不登校の悩みを相談できる場所

一人で抱え込まず、専門家の力を借りたり、同じ悩みを持つ人と繋がったりすることが大切です。

スクールカウンセラー・教育支援センター

最も身近な相談先です。学校生活に密着したアドバイスをもらえたり、学校との連携をサポートしてもらえたりします。まずは担任の先生を通じて相談してみましょう。

児童精神科・小児科などの医療機関

発達障害の可能性も考えられる場合や、不登校が長引き、不眠、食欲不振、強い不安など、二次的な心身の不調が見られる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。診断や医学的な観点からのアドバイスが受けられます。

HSCに詳しい民間カウンセリング

HSCの特性に特化した、きめ細やかなサポートを受けたい場合に有効です。オンラインで全国どこからでも相談できるカウンセリングサービスも増えています。HSCの子育て経験があるカウンセラーも多く、親の気持ちに寄り添った支援が期待できます。

不登校の親の会・オンラインコミュニティ

同じ悩みを持つ親同士で繋がり、情報交換や悩みの共有ができる貴重な場所です。体験談を聞くだけでも、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と心が軽くなるはずです。地域の親の会や、SNS上のオンラインコミュニティなどを探してみましょう。

HSCや不登校の子どもをサポートする学校・相談機関は全国にあります。家庭だけで抱え込まず、専門家と一緒に次のステップを考えてみませんか?

HSP・不登校に関するよくある質問

最後に、HSPや不登校に関して保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。

HSCは病気?治療や薬は必要?

A. HSCは病気ではなく、生まれつきの「気質」です。 そのため、HSC自体を「治す」ための治療や薬はありません。

ただし、不登校による強いストレスから、うつ状態や不安障害といった二次的な症状が出ている場合は、医療機関での治療が必要になることもあります。まずは子どもの心身の状態をよく観察することが大切です。

中学生・高校生の不登校への対応は?

A. 基本的な対応は小学生と同じですが、思春期特有の複雑な心境や、将来への不安に寄り添うことがより重要になります。

本人の意思を最大限に尊重し、一方的に指示するのではなく、進路について一緒に考えるパートナーとしての姿勢が求められます。通信制高校、定時制高校、フリースクール、高卒認定試験など、多様な学びの選択肢があることを伝え、本人が自分に合った道を選べるようサポートしましょう。

将来の進路や仕事はどう考えればいい?

A. HSCの特性は、決して弱点ではありません。むしろ、大きな強みになります。

高い共感力、深い思考力、優れた直感力は、カウンセラー、研究者、アーティスト、職人、動物の世話など、専門性を活かす仕事や、少人数で深く関わる仕事で才能を発揮します。焦って苦手な環境に合わせさせようとせず、お子さんの興味や関心に寄り添い、その特性を活かせる道を探してあげましょう。

ゲームや動画漬けへの対処法は?

A. ゲームや動画の世界は、HSCの子にとって現実の過剰な刺激から逃れるための大切な避難場所になっている場合があります。

頭ごなしに禁止したり、取り上げたりするのは逆効果です。まずは「なぜそれに夢中になるのか」「その世界で何を感じているのか」を理解しようと歩み寄ることが第一歩です。その上で、時間を決めるルールを一緒に作ったり、散歩や読書、音楽鑑賞など、他のリラックス方法を提案したりして、少しずつ関わり方を変えていきましょう。

まとめ

今回は、HSP・HSCの気質を持つお子さんの不登校について、その原因と親の関わり方、相談先などを詳しく解説しました。

  • HSCは病気ではなく、5人に1人が持つ「ひといちばい敏感」という個性
  • 学校の過剰な刺激や人間関係が、不登校の引き金になりやすい
  • 不登校になったら、まずは休ませて心のエネルギーを充電させることが最優先
  • 家庭を「安心できる基地」にし、子どもの存在そのものを肯定する声かけを心がける
  • 判断に迷ったら、一人で抱え込まず専門家やコミュニティに相談する

HSCという気質は、繊細で疲れやすい反面、優しさ、思慮深さ、豊かな感受性という素晴らしい才能でもあります。不登校は、お子さんが自分を守るために選んだ、必要な休息期間です。

この記事が、今まさに悩んでいるあなたとあなたのお子さんにとって、少しでも心の安らぎと、次の一歩を踏み出すためのきっかけになれば幸いです。

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