「学校に行きたくない」 そう言って部屋に閉じこもる我が子。日に日に会話は減り、顔を合わせれば暴言を吐かれ、時には物に当たったり、親に手を上げたり…。
不登校になった中学生のお子さんの暴力的な言動に、どう対応すれば良いのか分からず、心身ともに疲れ果てていませんか?「自分の育て方が悪かったのだろうか」とご自身を責め、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいるかもしれません。
出口の見えないトンネルの中にいるような不安と恐怖は、決してあなた一人だけが抱えているものではありません。不登校と家庭内暴力は、多くのご家庭で起こりうる深刻な問題です。
この記事では、不登校の中学生が暴力をふるってしまう原因から、親が今すぐできる具体的な対処法、そして頼れる専門の相談窓口まで、状況を乗り越えるための情報を網羅的に解説します。
この記事を読めば、お子さんの苦しみの背景を理解し、ご自身の心を守りながら、解決に向けた次の一歩を踏み出すための道筋が見えてきます。 どうか一人で悩まず、まずはこの記事を最後まで読んでみてください。
暴言・暴力時に親がすべき安全確保

お子さんが暴れている、あるいは暴れ出しそうな状況では、議論や説得よりもまず、身の安全を確保することが最優先です。 パニックにならず、冷静に行動するための3つのステップを覚えておいてください。
身体的な安全を最優先する
お子さんが興奮し、物や人に危害を加え始めたら、何よりもまずご自身とお子さん、他の家族の身体的な安全を確保してください。 壊れやすいものや危険なものを片付け、可能であれば別の部屋へ静かに移動しましょう。お子さんを一人にすることに罪悪感を感じるかもしれませんが、これはお子さんを見捨てる行為ではなく、お互いを守るための必要な措置です。
刺激せず冷静に距離をとる
お子さんが興奮している時に、真正面から向き合って叱ったり、問い詰めたりするのは逆効果です。 強い言葉はさらなる興奮を招き、事態を悪化させるだけです。何も言わずにそっとその場を離れ、お子さんが一人で冷静になれる時間と空間を与えましょう。親が冷静でいることが、お子さんのクールダウンを促す第一歩となります。
警察や児童相談所への緊急連絡
家庭内の暴力がエスカレートし、ご自身や家族の生命に危険を感じる場合は、ためらわずに助けを求めてください。
- 【警察(110番)】
命の危険が迫っている、自分では止められないと感じた場合は、すぐに通報してください。「家庭内のことだから」と躊躇する必要は全くありません。 - 【児童相談所虐待対応ダイヤル(189)】
「いちはやく」と覚えましょう。虐待とまでは言えないと感じる場合でも、子どもの福祉に関する相談窓口として専門の職員が対応してくれます。緊急時には警察と連携して対応することもあります。
外部に助けを求めることは、決して恥ずかしいことではありません。 家族だけでは抱えきれない危機的状況から脱するための、勇気ある正しい選択です。
不登校中学生の暴言・暴力の原因

お子さんの暴力は、あなたを困らせるためではなく、言葉にできない苦しみやストレスの現れ、つまり「SOS」のサインです。その背景には、主に4つの原因が考えられます。
学校生活のストレスといじめ
学校は、子どもにとって大きなストレスの原因となり得ます。 特に思春期の中学生は、友人関係の変化や学業へのプレッシャーに非常に敏感です。
これらのストレスを家庭でうまく吐き出せず、行き場のないエネルギーが暴力という形で現れることがあります。
親子関係と家庭環境の問題
家庭が安心できる場所でなくなっている可能性も考えられます。 親としては良かれと思ってやっていることが、知らず知らずのうちにお子さんを追い詰めているケースは少なくありません。
思春期特有の心の不安定さ
中学生の時期は、「思春期」と呼ばれる、心と身体が大きく変化する嵐の季節です。 ホルモンバランスの変化により、自分でも感情のコントロールが難しくなります。
「大人として扱ってほしい」という自立心と、「まだ親に甘えたい」という依存心の間で心が揺れ動き、その葛藤やイライラが、最も身近な存在である親に向けられることがあります。この時期の反抗は、成長過程の一部であるとも言えますが、不登校という要因が加わることで、暴力という深刻な形をとることがあります。
発達障害の特性との関連
不登校や暴力の背景に、発達障害の特性が隠れている可能性もあります。 例えば、以下のような特性です。
- 【ASD(自閉スペクトラム症)】
コミュニケーションの困難さや、特定のこだわりが強い特性から、学校などの集団生活で強いストレスを感じやすいです。 - 【ADHD(注意欠如・多動症) 】
衝動性や感情のコントロールの難しさから、カッとなりやすく、暴力的な行動につながることがあります。
これらの特性は、本人の「わがまま」や「努力不足」ではありません。もし気になる点があれば、専門機関に相談することで、適切な対応方法が見つかるかもしれません。
家庭内暴力への親の正しい対処法

お子さんの暴力に直面したとき、親としてどのように向き合えば良いのでしょうか。ここでは、根本的な解決を目指すための3つのアプローチを紹介します。
親自身の心のケアを最優先
最も重要なのは、親であるあなた自身の心と身体の健康です。 お子さんのことで頭がいっぱいになり、自分のことを後回しにしていませんか?親が心身ともに疲れ果ててしまっては、お子さんを支えることはできません。
あなたが笑顔でいることが、家庭の雰囲気を明るくし、結果的にお子さんの安心につながります。
子どものSOSを理解する傾聴
お子さんの暴力は、あなたへの攻撃ではなく、「助けて」という悲痛な叫びです。そのSOSを正しく受け止めるためには、批判や評価をせず、ただ話を聴く「傾聴」の姿勢が不可欠です。
「何があったの?」と問い詰めるのではなく、「そっか」「うんうん」と相槌を打ちながら、お子さんが自分の言葉で話し始めるのを待ちましょう。たとえ暴言であっても、その裏にある悔しさや悲しみに耳を傾けることが、信頼関係を再構築する第一歩となります。
家庭内のルールの再設定
家庭が安心できる場所であるためには、基本的なルールが必要です。その中でも、「いかなる理由があっても、暴力は絶対に許されない」というルールを、親子で明確に共有することが重要です。
ただし、これを伝えるのはお子さんが興奮している時ではありません。お互いが冷静な時に、「あなたのことは大切に思っている。でも、叩いたり、物を壊したりするのは間違っている。とても悲しい」と、親の気持ち(アイメッセージ)として伝えましょう。そして、もし次に暴力があった場合はどうするか(例:親は別室に行く、専門機関に相談するなど)を具体的に決めておくことも有効です。
暴言・暴力を悪化させる親のNG言動

良かれと思ってかけた言葉や取った行動が、実はお子さんをさらに追い詰め、状況を悪化させてしまうことがあります。ここでは、特に注意したい3つのNG言動を紹介します。
子どもを感情的に叱責・否定する
「どうしてそんなこともできないの!」「あなたのせいでメチャクチャよ!」 このような感情的な言葉は、お子さんの心を深く傷つけ、自己肯定感を奪います。暴力に対してさらなる暴力(言葉の暴力)で応酬しても、何も解決しません。 お子さんは心を閉ざし、反発を強めるだけです。
無理に登校させようとする
「いつまで休んでいるの!」「みんな学校に行っているんだよ!」 不登校には必ず原因があります。その原因が解決されないまま無理に登校を促すことは、お子さんをさらに追い詰める行為です。 まずは学校を休んでエネルギーを充電することが必要な時期だと理解し、登校を強要するのはやめましょう。
他の子どもと比較する発言
「お兄ちゃんはちゃんとやっていたのに」「〇〇ちゃんは頑張っているのに、どうしてあなたは…」 他人との比較は、お子さんから自信とやる気を奪う最も残酷な言葉の一つです。 お子さんは「自分はダメな人間だ」と感じ、親への不信感を募らせます。比べるべきは過去の誰かではなく、お子さん自身の小さな成長や努力です。
家庭内暴力の無料相談窓口と支援機関

家庭内だけで問題を解決しようとせず、専門家の力を借りることが非常に重要です。公的機関から民間団体まで、無料で相談できる窓口は数多く存在します。
公的な相談窓口
国や自治体が運営しており、無料で相談できるのが特徴です。
児童相談所
子どもの福祉に関するあらゆる問題に対応する専門機関です。子どもの一時保護や、親子関係改善のための指導・助言などを行います。緊急時には「189(いちはやく)」に電話してください。
教育支援センター(適応指導教室)
各市町村の教育委員会が設置している施設です。不登校の児童生徒に対して、学習支援や集団活動、教育相談などを行い、学校復帰や社会的自立をサポートします。
精神保健福祉センター
心の健康に関する相談ができる専門機関です。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。思春期の問題や発達障害に関する相談にも対応してくれます。
民間の支援団体・施設
公的機関とは異なる視点や、より柔軟なサポートが期待できます。
NPO法人・相談カウンセリング
不登校やひきこもり、家庭内暴力の問題に特化したNPO法人や民間のカウンセリングルームが全国にあります。同じ悩みを持つ親の会などを開催している団体もあり、孤立感を和らげる助けになります。
フリースクール・通信制サポート校
学校以外の「居場所」や「学びの場」を提供する施設です。子どもに合った環境を見つけることで、自信を取り戻し、落ち着きを取り戻すケースも少なくありません。多様な選択肢があることを知っておきましょう。
暴力に対応する民間入所施設
家庭内暴力が深刻で、親子が一緒に暮らすことが困難な場合に、一時的に子どもを受け入れてくれる民間の施設もあります。親子が物理的な距離を置くことで、冷静さを取り戻し、関係再構築のきっかけになることがあります。
医療機関
暴力の背景に医学的な問題が考えられる場合は、医療機関への相談も有効です。
精神科・心療内科
気分の落ち込みが激しい、自傷行為がある、幻覚や幻聴が見られるなど、精神的な不調が疑われる場合に相談を検討します。適切な診断と治療によって、症状が劇的に改善することがあります。
小児科・思春期外来
まずはかかりつけの小児科医に相談するのも一つの方法です。また、総合病院などには思春期の子どもの心と身体の問題を専門に診る「思春期外来」が設置されていることもあります。
不登校と暴力を乗り越えた家庭の事例

今、この瞬間も苦しんでいるあなたに、希望を持ってもらうために、同じような困難を乗り越えたご家庭の事例を3つご紹介します。
親子関係の見直しで改善したケース
中学2年生のA君は、不登校になってから母親に暴言を吐くようになりました。母親はA君の将来を心配するあまり、毎日「勉強しなさい」「学校に行きなさい」と叱責。関係は悪化する一方でした。しかし、カウンセリングで「まずはお母さんが変わること」を勧められ、A君を管理するのをやめ、ただ話を聴くことに徹しました。すると、A君は少しずつ学校での辛かった出来事を話し始め、母親もA君の苦しみを初めて理解できました。親が「味方」だと感じられたことで、A君の心は安定し、暴力は収まっていきました。
第三者の介入で解決に向かったケース
中学1年生のB子さんは、父親に対して物を投げつけるなどの暴力が続いていました。父親は厳しくしつけようとしましたが、反発は強まるばかり。家庭は崩壊寸前でした。母親が藁にもすがる思いでフリースクールに相談したところ、スタッフが家庭訪問を開始。B子さんは親には言えなかった本音をスタッフに打ち明けることができました。親以外の信頼できる大人が間に入ることで、親子の間の緩衝材となり、冷静な対話が可能になりました。 B子さんはフリースクールに通い始め、家庭の外に居場所ができたことで、父親との関係も改善していきました。
医療との連携で落ち着きを取り戻したケース
小学6年生から不登校気味だったC君は、中学生になると感情の爆発が激しくなり、家で暴れるようになりました。親は途方に暮れていましたが、スクールカウンセラーの勧めで専門の医療機関を受診。結果、ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けました。医師の指導のもとで環境調整(刺激の少ない部屋作りなど)を行い、必要に応じて薬物療法を開始したところ、C君の衝動性は大きく改善。 感情が安定したことで、親子で不登校の原因について話し合えるようになり、通信制高校への進学という新たな目標を見つけることができました。
まとめ
不登校の中学生のお子さんによる家庭内暴力は、親にとって計り知れないほどの苦痛と不安をもたらします。しかし、その暴力は、お子さんからの必死のSOSサインです。
この記事でお伝えしたことを、最後にもう一度振り返ります。
何よりも忘れないでください。あなたは一人ではありません。 そして、この問題はあなたの育て方のせいではありません。
今すぐ状況が劇的に変わることはないかもしれません。しかし、親子関係は積み重ねです。正しい知識を持ち、適切な支援を求め、一歩ずつ行動することで、必ず光は見えてきます。
