フリースクールは、様々な事情で学校に通うのが難しくなったお子様を受け入れている施設です。しかし、その詳細な内容については、なかなかイメージしづらいですよね。お子様を預ける場所になりますので、フリースクールを検討する場合にはその特徴や制度面について、事前に理解しておくことが大切です。このコラムでは、保護者の皆さまが安心してフリースクールを選択できるよう、利用前に知っておきたい注意点や課題をわかりやすくご紹介します。
フリースクールとは?
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フリースクールは、不登校などの子どもたちが安心して学べる場として、学校外での学びや居場所を提供する民間の教育機関です。この項目では、フリースクールの基本的な仕組みや役割、背景について見ていきましょう。
不登校とフリースクールの関係
近年、不登校の児童生徒数は増加傾向にあり、文部科学省の調査によると、2024年度の小・中学校における不登校児童数は過去最多の34万6482人に上りました。その背景にはいじめなど学校での人間関係や過度なストレス、家庭環境の変化や生活リズムの乱れなどさまざまありますが、従来の学校では柔軟な対応が難しい場合も多いのが現状です。こうした中、子どもが安心して過ごせる新たな「居場所」としてフリースクールへの注目が高まっています。フリースクールは、学び直しはもちろん、心の回復や社会との信頼関係の再構築の場として大きな意義を持っているのです。
学校との違い
フリースクールは、文部科学省が管轄する公立・私立学校とは異なり、民間が運営する自由な学びの場です。そのため、全国共通のカリキュラムや成績評価はなく、子どもの興味やペースに合わせて学ぶことができる点が特徴になります。制度上は義務教育の学校とは異なるため、通っただけでは自動的に出席扱いにはなりませんが、在籍校との連携により、一定の条件を満たすことでフリースクールでの活動が出席と認められる場合もあります。また、フリースクールは学力だけでなく精神的なサポートも行っている点が、一般的な学校との大きな違いです。
利用できる年齢・期間・費用の目安
フリースクールは主に小学生から高校生世代を対象としており、不登校のお子様だけでなく、発達特性がある子や学校になじめない子どもも多く通っているのが特徴です。通う頻度は週1回から毎日までさまざまで、子どもの状況や希望に応じて柔軟に選ぶことができ、本人のペースに合わせることが可能となっています。費用は月額2万〜5万円程度が一般的ですが、施設によっては入会金や教材費が別途かかることもあるため、事前の確認が大切です。フリースクールを検討する際は、料金はもちろん、対象年齢や通う頻度をしっかり調べておきましょう。
フリースクールの問題点・デメリット

自分のペースで無理なく通うことができる点が魅力のフリースクールですが、民間が運営しているため、施設ごとに差が大きいのも特徴の1つです。ここでは、利用を検討する際に注意すべき点をご紹介します。
学習支援が十分でないことがある
フリースクールでの学びの特長として、学習指導要領に縛られていない点があります。これは、フリースクールが公的な機関ではなく、あくまでも民間の機関だからこそできるもので、お子さまのペースや関心に合わせた学習が可能なのが魅力なのですが、その一方で、施設によって学習指導の質や内容にばらつきがみられる点に注意が必要です。特に、中学卒業後の進路を見据えた際に、「学力がつくのか」「受験に対応してもらえるのか」といった不安を感じられる保護者も多く、どの程度の学習支援が行われているのか、事前に見学などで確認することが大切になります。
制度や説明に誤解が生まれやすい
フリースクールに通うことで出席扱いになるかどうかには明確な基準がなく、在籍する学校長の判断にゆだねられてしまうため、情報不足や説明不足がトラブルの原因になりやすいという問題点があります。また、支援内容についても具体的な説明が不十分なまま通い始め、期待していた学習支援や進路指導が受けられないという例も見られます。フリースクールごとに方針や運営体制は大きく異なるため、パンフレットやウェブサイトだけで判断せず、見学や面談を通じて実際の支援内容や制度の説明をしっかり確認しておくことが大切です。
運営や対応にばらつきがある
フリースクールは運営方針や教育理念が施設によって異なるため、支援の質やスタッフの経験等に大きな差があるのが実情です。例えば、教育や福祉の専門知識を持ったスタッフが常駐している場合もあれば、熱意はあっても専門的な支援が不十分な場合もあるでしょう。また、保護者との連携体制にもばらつきがあり、期待していた支援が受けられなかったという声もあります。安心して通える環境を選ぶためには、実際の運営内容やスタッフの資格・経験、過去の対応実績などを見学や説明会でしっかり確認し、信頼できるかどうかを見極めることが大切です。
費用に対する不満が出やすい
フリースクールは多くが民間によって運営されており、公的な支援はほとんどなく、費用は基本的に自己負担です。文部科学省の調査では月額費用は平均約3万3000円ですが、施設によってはそれ以上かかり、入会金や教材費などが別途必要な場合もあります。こうした費用に対し、「支援内容に対して料金が見合わない」といった不満の声は事実として存在するため、フリースクールを検討する際は、料金体系と実際の内容を確認することが大切です。また、自治体によっては補助制度がある場合もあるため、事前に調べておくとよいでしょう。
フリースクールのメリット

フリースクールには課題もありますが、一方で子どもの個性やペースを尊重できるなど、学校にはない多くのメリットもあります。ここではフリースクールの特長やメリットについて紹介いたします。
自分のペースで過ごせる安心感
フリースクールの大きな魅力の1つに、子どもが自分のペースで安心して過ごせる環境が整っている点があります。多くのフリースクールは少人数制を採用しているので、大人数の中で過ごすことが苦手な子どもでも落ち着いて過ごすことができますし、時間割や活動内容にも柔軟性があるので、子どもは無理をせず自分のペースに合わせた過ごすことができるのです。こうした自由な環境の中で、子どもは徐々に自己肯定感や自信を取り戻して自分らしさを発揮できるようになり、それが将来的な社会復帰への一歩となることも少なくないでしょう。
人とのつながりを持ち直せる
不登校の子どもは孤立感や自己否定感を抱きやすく、人と関わること自体に不安を感じていることも少なくありません。そうしたなか、フリースクールは、学校に通えなくなった子どもたちにとって、再び人とのつながりを取り戻す大切な「居場所」としての役割も果たしています。様々な年齢の子供たちが通っているフリースクールは、学年や価値観の垣根を越えた交流が生まれやすい環境です。こうした人とのゆるやかな関わりを通じて、社会性やコミュニケーション力が育まれ、将来的に学校や社会へと再びつながるための土台づくりにもつながります。
再登校・進学へのステップになる
フリースクールには、不登校の子どもが通っていた学校へ復帰することや、高校・大学などへの進学をサポートする役割も担っているという面もあります。進路相談、受験対策などをサポートしている施設もあるほか、フリースクールへの通学が「出席扱い」となるケースもありますので、最終的に在籍校への復帰や高校や大学への進学につながるケースも少なくありません。フリースクールを選ぶ際には、復学や進学を視野に入れた場合の学習支援があるか、進路相談ができるかなどを考慮することが大切になります。
フリースクールの後悔しない選び方

フリースクールは施設ごとに特色や支援内容が大きく異なるため、選び方を間違えると子どもや家庭にとって負担になることもあるでしょう。ここでは、フリースクールを選ぶにあたって後悔しないためのチェックポイントを紹介します。
学習支援やカリキュラムを事前に確認する
フリースクールには決まったカリキュラムがない場合が多く、学習内容や教育方針は施設ごとに大きく異なります。そのため、フリースクールを選ぶ際には、どのような学習支援が行われているかを事前に確認しておくことが重要です。子どもの自主性を尊重し、自学自習を中心とする施設もあれば、学び直しや学力向上を目的とした指導に力を入れているところもあります。教育方針やカリキュラムの有無、授業のスタイルなどを具体的に把握し、自分の子どもの学習ニーズに合っているかどうかを見極めることが大切です。
制度・出席扱いの仕組みをチェックする
フリースクールを選ぶうえで、出席扱いになるかどうかは非常に重要なポイントです。フリースクールは民間の施設であるため、ただ通うだけでは出席扱いにはなりません。在籍校の校長が認めた場合に限り、出席日数として認定される仕組みです。そのため、フリースクールと在籍校が連携できているか、また過去に出席扱いの実績や対応ノウハウがあるかどうかも、事前に確認しておくことが大切です。出席扱いが認められないと、子どもの進級や進学に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な判断と学校や施設との相談が欠かせません。
運営者の実績・理念を見極める
不登校の増加に伴い、フリースクールの数も近年増加傾向にあるので、運営者の実績や理念、スタッフの経験も事前に確認しておくと良いでしょう。中には運営歴が浅く十分なサポート体制が整っていない施設もあるので、教育の知識や出席扱いの実績があるのかどうかや、子どもに対してどう接しているのかといった点を見極めることが大切になります。ウェブサイトやパンフレットの情報だけでなく、見学や面談などを通じて信頼できる運営者かどうかをしっかり確認しましょう。長く通う場だからこそ、子どもとの相性だけでなく、運営側との信頼関係も大切です。
子ども本人の気持ちと相性を最優先にする
フリースクールを選ぶうえで忘れてはいけないのが、子どもにとって「安心して通える環境かどうか?」という点です。たとえ支援体制や実績が整っていたとしても、お子さまとの相性が悪ければ、継続的に通うことは難しくなります。フリースクールごとに雰囲気や学び方は大きく異なるので、パンフレットだけで判断せず、見学や体験を通じて、子ども自身の反応を確かめてみましょう。保護者の希望だけでなく、本人の気持ちを最優先にすることが、フリースクールを子どもにとって有意義な場にするうえで大切です。
フリースクールに関する後悔と成功のリアル

フリースクールの利用には成功もあれば後悔もあり、実際に通った家庭の体験談には、選ぶ際のヒントや注意すべきポイントが詰まっています。ここでは、過去にフリースクールを利用した方のリアルな声を見ていきましょう。
子どもが学校に行けなくなってしまい、焦る気持ちでフリースクールを探し始めました。すぐに対応してくれたところに決めたのですが、今思えばもう少し時間をかけて選ぶべきだったように思えます。
通い始めた当初は子どもも少し明るくなったのですが、通っているうちに「ただ過ごすだけ」になってしまい、学習面がほとんど見てもらえていないことに気付きました。スタッフの方は優しいのですが、進路や学力の面での不安は残ったまま。中学卒業後の進路について相談しても、「うちではそこまでやってないんです…」と申し訳なさそうに言われるだけでした。
費用も月謝としては決して安くないので、正直「この内容でこの金額だったのか」という思いです。子どもは今年中3になりますが、本当にここに来させて正解だったのか今でもよく考えます。「もっと親子で話し合って、慎重に決めるべきだったな」「これから苦労するのはこの子なのに、申し訳なかったな」という気持ちがずっと消えません。
通ってよかったと感じたケース
息子が中1のときに不登校になり、家に閉じこもるようになってしまいました。学校に行かせることばかりに気を取られていた私は、子どもとの関係もどんどん悪くなっていって…。そんなとき、相談先で紹介されたフリースクールに思い切って見学に行ってみたんです。最初は不安でしたが、見学中にスタッフの方が本当にじっくり話を聞いてくださって、息子も珍しく「行ってもいいかも」とつぶやきました。それが通うきっかけになりました。
通い始めて数週間は行けたり行けなかったりを繰り返していましたが、少しずつ笑顔が増えていって、今では自分から「明日も行く」と言うようになりました。学習も本人のペースに合わせて進めてくださるので、焦らず取り組める環境が何よりありがたかったです。
学校復帰とはまた違う形の“居場所”を見つけられたことで、家庭内の空気も穏やかになりました。あのとき踏み出して、本当に良かったと思っています。
まとめ
フリースクールは、不登校の子供にとって大切な居場所となる一方で、検討にあたっては慎重な姿勢が必要です。支援の内容や質、費用面の違いなど事前に確認すべき点も多くあり、子どもとの相性面も大切になります。フリースクールは見学可能なところがほとんどですので、まずは実際に施設に足を運んでみましょう。子どもの気持ちを尊重し、家庭に合う選択を重ねていくことで、後悔のないフリースクール選びにつながります。