一度は回復に向かい、再登校を果たしたお子さんが、再び学校を休みがちになる「不登校の逆戻り」。保護者の方にとっては、「あと少しだと思ったのに、なぜ?」「自分の対応が間違っていたのだろうか」と、焦りや不安、落胆を感じてしまう辛い状況だと思います。
しかし、不登校の回復過程において、この「逆戻り」は決して珍しいことではありません。むしろ、多くの子どもが経験する自然なプロセスの一部なのです。
この記事では、不登校の逆戻りが起こる原因とメカニズム、そして保護者の方が今すぐできる具体的な対応について、分かりやすく解説します。この記事を読めば、逆戻りへの不安が和らぎ、お子さんとの向き合い方についてのヒントが見つかるはずです。
不登校の逆戻りは回復過程の一部

まず最も大切なことは、不登校の逆戻りは「失敗」や「後退」ではないと理解することです。これは、お子さんが次のステップに進むために必要な調整期間であり、回復過程の一部なのです。
回復段階と逆戻りが起きやすい時期
不登校からの回復は、一直線に進むわけではありません。一般的に、以下のような段階を経て進んでいくと言われています。
- 混乱期
親子ともに混乱し、どうしていいか分からなくなる時期。 - エネルギー充電期
学校から離れて心身を休ませ、エネルギーを蓄える時期。 - リハビリ期
外出したり、好きなことに取り組んだりして、少しずつ活動を始める時期。 - 再登校期
学校へ再び通い始める時期。
この中で、逆戻りが最も起きやすいのは「リハビリ期」から「再登校期」にかけてです。少しずつ回復してきたエネルギーを使い、新しい環境や活動に挑戦するため、心身に再び大きな負荷がかかるからです。
逆戻りは「三歩進んで二歩下がる」状態
不登校からの回復は、よく「三歩進んで二歩下がる」と表現されます。毎日少しずつ良くなるのではなく、行ったり来たりを繰り返しながら、ゆっくりと前に進んでいくイメージです。
昨日まで元気だったのに今日は動けない、という状況は、お子さん自身も戸惑い、自分を責めてしまうことがあります。保護者の方は、このような揺り戻しがあることを前提として、一喜一憂せずに長い目で見守る姿勢が大切です。
「安定期が長い」はエネルギー充電の証
「回復期に入ったはずなのに、家でずっとゲームばかりしている」「なかなか次の行動に移らない」と、安定期が長く続くことに焦りを感じるかもしれません。
しかし、安定期が長いのは、それだけお子さんの心身のエネルギーが枯渇しており、回復に多くの時間が必要だというサインです。この時期は、お子さんが安心してエネルギーを充電できる「安全基地」として家庭の環境を整えることが何よりも重要になります。
不登校が逆戻りする兆候・サイン

「また不登校になりそう…」と感じたとき、お子さんは心身に何らかのサインを発していることが多いです。ここでは、逆戻りの兆候を「身体」「精神」「行動」の3つの側面に分けてご紹介します。
身体的なサイン(よく寝る・疲れやすい)
- 【以前よりも睡眠時間が長くなる、よく寝る】
心身の疲れを回復させようとする本能的な反応です。特に回復期によく寝るのは、エネルギーを蓄えている証拠でもあります。 - 【「疲れた」と口にすることが増える】
登校や外出など、少しの活動でもエネルギーを大きく消耗してしまいます。 - 【頭痛や腹痛など、身体的な不調を訴える】
精神的なストレスが、身体症状として現れることがあります。
精神的なサイン(無気力・口数が減る)
- 【好きだったことにも興味を示さなくなる(無気力)】
再びエネルギーが枯渇し始め、何かを楽しむ気力がなくなっている状態です。 - 【口数が減り、部屋にこもりがちになる】
人とコミュニケーションをとるエネルギーがなく、一人で静かに過ごしたいと感じています。 - 【イライラしやすくなったり、感情の起伏が激しくなったりする】
自分の状態が思い通りにならないことへの焦りや不安が、感情の不安定さとして現れます。
行動面のサイン(朝起きられない・登校を渋る)
- 【朝、時間になっても起きられない】
単なる寝坊ではなく、学校へ行くことへの抵抗感が身体的な重さとして現れている可能性があります。 - 【登校の準備に時間がかかる、ぐずぐずする】
学校へ向かうことへの不安やストレスから、無意識に行動が遅くなってしまいます。 - 【「明日、学校休んでもいい?」と聞いてくる】
エネルギーが限界に近づいているサインです。ここで無理をさせると、完全に枯渇してしまう恐れがあります。
特に繊細気質(HSC/HSP)のお子さんは、再登校後の環境変化に強いストレスを感じやすい傾向があります。気質特性と不登校の関連をまとめた記事はこちらです。
復帰後にまた休む主な原因

では、なぜ一度は回復に向かったお子さんが、復帰後にまた休むようになってしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの共通した原因があります。
再登校によるエネルギーの再枯渇
不登校を経験した子どもにとって、学校へ行くという行為そのものが、心身のエネルギーを非常に大きく消費します。たとえ本人が「行きたい」と思っていても、授業を受け、友人と話し、集団の中で過ごすことは、想像以上の負担となります。
回復期に蓄えたエネルギーが、登校生活の負荷によって再び枯渇してしまうことが、逆戻りの最も大きな原因の一つです。
学校環境への再適応の難しさ
久しぶりに戻った学校は、以前とは違って見えることがあります。
こうした環境の変化に再び適応していく過程で、大きなストレスを感じてしまうことがあります。特に、休んでいた期間が長いほど、再適応のハードルは高くなります。
学習の遅れや友人関係への不安
再登校したお子さんの多くが、「勉強についていけるだろうか?」「友達は自分のことをどう思っているだろうか?」という具体的な不安を抱えています。
この不安は、学校生活を送る上で常に付きまとう重荷となり、少しずつエネルギーを奪っていきます。特に周りの目を気にする繊細なお子さんほど、このプレッシャーを強く感じてしまいます。
完璧主義の特性が強いお子さんは、学校生活でのストレスが人一倍積み重なりやすい傾向があります。
背景に発達特性が関係するケースもあり、詳しくはこちらで解説しています。
親や周囲からの無意識のプレッシャー
「もう大丈夫だよね」「明日も学校に行けるよね」といった、保護者や周囲の期待が、無意識のうちにお子さんへのプレッシャーになっていることがあります。
子どもは親をがっかりさせたくない一心で、辛くても「大丈夫」と無理をしてしまいがちです。その結果、エネルギーが限界を超えてしまい、突然動けなくなってしまうのです。
逆戻りした時の親の対応【OKとNG】

お子さんに逆戻りの兆候が見られたとき、保護者の方の対応がその後の回復を大きく左右します。ここでは、避けるべき「NG対応」と、心がけたい「OK対応」を具体的に解説します。
NG対応:原因の追及や叱責
これらの対応は、お子さんを追い詰め、自己肯定感をさらに下げてしまいます。「自分のせいだ」「親を困らせている」と感じさせ、本音を話せなくさせてしまう最も避けるべき対応です。
NG対応:無理な登校刺激や焦りの表出
エネルギーが枯渇している状態での「頑張れ」は、逆効果です。保護者の方の焦りは必ずお子さんに伝わり、さらなるプレッシャーを与えてしまいます。
OK対応:気持ちを受け止め十分な休息を許可する
逆戻りが起きたときに最も大切なのは、お子さんの辛い気持ちを受け止め、まずは安心して休める環境を保証することです。お子さんが「休んでも大丈夫なんだ」と感じられることが、再回復への第一歩となります。
OK対応:安心できる家庭環境を維持する
家庭がピリピリした雰囲気だと、お子さんは心から休むことができません。家庭を「何があっても受け止めてもらえる安全基地」にすることで、お子さんは再びエネルギーを充電する意欲を取り戻すことができます。
不登校の逆戻りに関するよくある質問

ここでは、不登校の逆戻りに関して、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 回復期に勉強しないのは問題?
A. 問題ありません。回復期は、エネルギーを充電することが最優先です。
勉強への意欲が湧かないのは、まだそのためのエネルギーが溜まっていない証拠です。無理に勉強させようとすると、かえってエネルギーを消耗させてしまいます。
お子さんが好きなことや興味のあることに没頭する時間も、大切な回復プロセスの一部です。エネルギーが十分に回復してくれば、自然と学習への関心も戻ってくることが多いです。まずは焦らず見守りましょう。
Q. 高校生が再登校後にまた不登校になるケース
A. 高校生の場合、進級や単位、卒業といった現実的な問題が大きなプレッシャーとなり、逆戻りの引き金になることがあります。
中学時代とは異なり、「休む=留年」というプレッシャーが常に付きまといます。また、友人関係もより複雑になり、一度崩れた関係を修復するのが難しいと感じるケースも少なくありません。
高校生の不登校が再発した場合、元の学校への復帰に固執せず、通信制高校や定時制高校、高卒認定試験など、他の選択肢も視野に入れることが重要です。お子さんにとって、環境を変えることが根本的な解決に繋がることもあります。
Q. 中学生の再登校パターンと注意点
A. 中学生の再登校には、毎日登校する以外にも様々なパターンがあります。
注意点として、保護者の方が「完全な再登校」をゴールに設定しないことが挙げられます。お子さんなりのペースで少しでも学校と繋がれている状態を認め、スモールステップを褒めてあげることが、次の段階へ進む力になります。
Q. 周りの目が気になる子供への声かけ
A. 「周りはそんなに気にしてないよ」と否定するのではなく、まずは「周りの目が気になるんだね」と不安な気持ちに共感してあげましょう。
その上で、「お母さん(お父さん)はあなたの味方だから大丈夫だよ」と伝え、家庭が安心できる場所であることを示してあげてください。お子さんの不安を軽くしようとするのではなく、不安な気持ちに寄り添う姿勢が、お子さんの心を安定させます。
Q. 元の学校に戻るのは難しい?
A. お子さんの状況や不登校の原因によっては、元の学校に戻ることが難しい場合もあります。
いじめや教員との関係など、不登校の根本的な原因が学校環境にある場合、そこに戻ることは再び同じ苦しみを繰り返すことになりかねません。
大切なのは、「元の学校に戻ること」を唯一のゴールにしないことです。転校やフリースクール、教育支援センターの利用など、お子さんが自分らしくいられる場所は他にもあります。視野を広げ、お子さんにとって最善の環境は何かを一緒に考えていくことが大切です。
逆戻りを繰り返さないための関わり方

逆戻りは回復過程の一部ですが、できれば繰り返したくないものです。ここでは、長期的な視点で逆戻りを防ぎ、安定した回復を目指すための関わり方をご紹介します。
根本的なストレス原因の特定と調整
不登校のきっかけとなった根本的なストレス原因が解決されていない限り、逆戻りは起こりやすくなります。
お子さんと穏やかに対話できるタイミングで、何が負担になっているのかを一緒に考えてみましょう。もし学校環境に原因がある場合は、スクールカウンセラーや担任の先生と連携し、クラスの変更や座席の配慮など、環境調整を依頼することも有効です。
子供の自己肯定感を育むコミュニケーション
不登校と自己肯定感には密接な関係があります。お子さんの“不安の背景”をより深く理解したい方は、以下の記事も参考になります。
不登校を経験した子どもは、自己肯定感が大きく低下しています。「学校に行けない自分はダメだ」と感じています。
自己肯定感を高める関わり方については、こちらの記事で年齢別により詳しく解説しています。
スモールステップでの目標設定と成功体験
いきなり「毎日登校する」という大きな目標を立てるのではなく、達成可能なごく小さな目標(スモールステップ)を設定し、成功体験を積み重ねていくことが自信に繋がります。
こうした小さな「できた」の積み重ねが、「自分にもできるかもしれない」という自己効力感を育みます。
専門機関や第三者との連携
不登校の問題を、親子だけで抱え込む必要はありません。客観的な視点を持つ第三者のサポートは、状況を好転させる大きな力になります。
これらの専門機関は、不登校に関する豊富な知識と経験を持っています。保護者の方の相談に乗ってもらうだけでも、心の負担は大きく軽減されるはずです。勇気を出して、相談の扉を叩いてみてください。
まとめ
不登校の回復期に起こる「逆戻り」は、失敗や後退ではなく、お子さんが次のステップへ進むためにエネルギーを再調整している大切な期間です。
この記事のポイントをもう一度振り返ってみましょう。
保護者の方が焦らず、お子さんのペースを信じて見守ることが、何よりの力になります。この記事が、先の見えない不安を抱えるあなたの心を少しでも軽くし、お子さんと共に前に進むための一助となれば幸いです。一人で抱え込まず、いつでも専門機関を頼ってくださいね。
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