「学校に行きたくない」と口にする子どもが「めんどくさい」と理由を挙げると、つい“サボり”や“甘え”と受け取ってしまうことがあります。しかし、その言葉の裏には無気力や不安、自己否定感など、目に見えにくい心のサインが隠されていることも少なくありません。本記事では、不登校における「めんどくさい」の本当の意味や無気力型の特徴を解説し、家庭での正しい関わり方や避けたい対応について具体的にご紹介します。
不登校の子どもの「めんどくさい」に隠れた本音

子どもが「めんどくさい」と口にするのは、単なる怠けや甘えではなく、その裏には不安や疲れ、自己防衛など複雑な心理が隠れていることがあります。この章では、「めんどくさい」という言葉の裏にある心理について詳しく見ていきます。
自分の気持ちを上手く言葉にできない
子どもはまだ自分の気持ちを整理して言葉にする力が十分に発達していないことが多く、特にストレスや不安を抱えると、自分でも状況をうまく説明できず、複雑な思いを「めんどくさい」という一言で片づけてしまうことがあります。本当は「やりたいけど不安」「人と関わるのが怖い」といった気持ちがあるのに、それを言葉にするエネルギーが不足しているのです。そのため、短い言葉に置き換えて自分を守り、周囲との摩擦を避けようとしています。こうした心理を理解することが、子どもの気持ちに寄り添う第一歩になります。
防御反応としての「めんどくさい」
親や学校から「なぜ行かないの」「理由を言いなさい」と追及されると、子どもは追い詰められた気持ちになります。そんな時に子どもがよく使うのが、「めんどくさいから」という答えです。この言葉を使うと、それ以上理由を聞かれずに済むことが多いため、子どもにとっては自分の内面の不安や葛藤を守るための安全な表現であり、衝突を避ける役割を果たすいわば「防御策」になっています。そのため、大人が表面的な言葉だけで判断してしまうと、かえって距離が広がる原因となるため、背景にある心理を理解し、安心して話せる環境を作ることが大切です。
心のエネルギー不足や不安のサイン
子どもが「めんどくさい」と言うのは、心のエネルギーが不足しているサインである場合が多く、例えば朝起きられない、宿題や課題に手がつかない、部活に行く気力がわかないといった日常の場面に表れることもあります。これは決して怠けや甘えではなく、心身が疲れ果てている状態です。また、学校での失敗体験や友人関係の不安が積み重なることで、心に余裕がなくなり、「やる気が出ない」と感じやすくなることもあります。大人はこうしたサインを見逃さず、無理に行動を促すのではなく、安心できる環境と休息の時間を与えることが大切です。
本心を隠している可能性も
「めんどくさい」という言葉の裏には、怖さやつらさ、自己否定などの重い気持ちが隠れていることがあります。子どもは傷つくことや否定されることを避けるため、本音を直接言わず軽い言葉でごまかすことが少なくありません。たとえば、友達とのトラブルやテストの不安、部活での失敗などを抱え、「行きたくないけど言えない」と感じるときに、「めんどくさい」と言って自分を守るのです。大人が表面的な言葉だけで判断すると、子どもはさらに心を閉ざしてしまうので、背景にある心理を理解し、安心して話せる環境を作ることが重要です。
無気力型の不登校とは?
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子どもが口にする「めんどくさい」という一言の裏側には、心のエネルギー不足や漠然とした不安が隠れていることがあります。こうした状況は不登校の中でも多く、漠然とした無気力感や不安から学校へ足が向かなくなってしまうケースもあります。この章ではこの「無気力型」不登校の特徴、さらに年代ごとの背景について詳しく見ていきます。
不登校の子どもが言う「めんどくさい」という言葉の裏にある「無気力」とは?
子どもが「めんどくさい」と言うと、多くの大人は「怠けている」と受け止めがちです。しかし実際には、自分の気持ちをうまく整理できず、複雑な気持ちや混乱を「めんどくさい」という一言でまとめてしまっている場合が多くあります。本当は「動きたいのに体が重い」「気持ちが追いつかない」といった無気力状態である場合も多く、特に不登校の子どもは心のエネルギーが不足しており、説明する力そのものが弱まっていることもあります。「めんどくさい」は子どもなりのSOSであり、その裏にある心のサインを保護者や周囲が受け止める姿勢が大切です。
最も多い「無気力型」不登校の特徴
文部科学省の調査によると、不登校の理由で最も多いのは「無気力・不安」に分類されるケースで、大きなトラブルがなくても、エネルギーが枯渇したように登校が難しくなるのが特徴です。このタイプは、周囲からは「怠けている」と誤解されやすく、子ども自身も「どうして動けないのか分からない」と苦しむことがあります。サポートのポイントはは、無理に登校を促すことではなく、家庭で安心できる環境を整えることです。「やってみよう」という気持ちを少しずつ取り戻せるように、焦らず、本人のペースを尊重する姿勢が大切になります。
年代別に見える「めんどくさい」の背景
「めんどくさい」という言葉の背景は、子どもの年齢や発達段階によって違いが表れます。
小学生の場合
学習内容が難しくなったり、友達関係が複雑になったりすると、気持ちを言葉にできず「めんどくさい」と片づけてしまうことがあります。宿題や登校準備を嫌がる姿の裏には「不安」「できないかもしれない」という気持ちが隠れていることも多く、単なる甘えではなく、成長に伴うストレスの現れです。
中学生の場合
思春期特有の自己否定感や人間関係の悩みが強くなり、「全部がしんどい」と感じやすくなる時期です。子どもによっては部活動やテストのプレッシャーも重なり、無気力感が一層強まります。表面的には「やる気がない」と見えても、心の内側では失敗への恐れや不安が大きくなっています。
高校生の場合
進路選択や将来への不安が大きく、「自分には無理」「考えるのがしんどい」といった感情が「めんどくさい」として表れることがあります。中には「何をしても意味がない」と感じるほど自己肯定感が低下しているケースもあり、こうした状況では表情や態度が無気力に見えても、実際には強い不安や葛藤を抱えているのです。
家庭でできる保護者の正しいサポート

子どもが「めんどくさい」と口にしたとき、親の関わり方次第で気持ちや回復の速度は大きく変わります。この章では、家庭で実践できる具体的なサポートのポイントや声かけの工夫を詳しく解説します。
まずは子どもの気持ちに寄り添う
子どもが「めんどくさい」と口にしたとき、親が最初にすべきことは決して叱ったり否定したりせず、気持ちをそのまま受け止めることです。「やる気がないんじゃない」「甘えているだけ」と決めつけず、「そう感じるんだね」と一言返すだけでも、子どもは自分の気持ちを安全に表現できると感じます。特に不登校や無気力型の子どもは、自己否定や不安で心がいっぱいになっていることが多いため、大人の落ち着いた態度や安心感は心の支えになります。焦って行動を促すよりも、まずは感情を理解し、共感して受け止めることが、子どもとの信頼関係を築く第一歩です。
些細な行動でも前向きにとらえ、認める
子どもが見せる小さな前向きな行動は、どんな些細なことでも見逃さずに認めることが大切です。例えば、宿題を少し進めた、朝起きて身支度をした、親に話しかけてくれたといった日常の変化も「よく頑張ったね」と肯定してあげましょう。こうした承認は、子どもが「自分の行動は認められている」と感じるきっかけになり、自己肯定感の回復につながります。また、変化を逐一記録したり、褒めるタイミングを逃さず声に出すことで、子どもは少しずつ「やってみよう」という気持ちを取り戻しやすくなります。前向きな行動の基盤を作るのは、こうした日々の観察と肯定の積み重ねです。
安心できる居場所・家庭環境をつくる
家庭は子どもにとって「最も安心できる居場所であること」が重要です。外でうまくいかないことがあっても、家に帰れば心が落ち着くという感覚があるかどうかで、不登校の回復スピードは大きく変わります。さらに、静かに過ごせる場所を作ったり、親が見守る時間を意識的に確保することも効果的ですし、生活リズムを無理のない範囲で整え、子どもが自分のペースで行動できる時間を保障することも安心感につながります。こうした環境は、心の安定を支え、無気力状態の子どもが少しずつ自分から行動しようという意欲を取り戻すための土台となります。
安心につながる声かけの工夫
不登校や無気力型の子どもに安心して話してもらうには、声かけの工夫も欠かせません。ポイントは、否定せず肯定的に受け止め、共感や励ましの言葉をかけることです。例えば「今日はここまでできたんだね、よく頑張ったね」「気持ちは分かるよ、一緒に考えよう」「やってみたいことはある?」といった声かけは、子どもが自分の思いを話しやすくなります。また、命令や批判を避け、本人のペースに合わせることも大切です。日常的にこうした工夫を取り入れることで、家庭は心を安心して開ける安全な拠点となり、子どもが少しずつ前向きな行動を取りやすくなります。以下の表は、親が実践しやすい声かけ例をまとめたものです。是非参考にしてみてください。
状況 | OK例 | NG例 |
朝起きるのがつらそうな時 | 「今日は少しゆっくりでいいよ、朝ごはん食べようか」 | 「どうしてまだ起きないの!さっさと起きなさい!」 |
学校に行きたがらない時 | 「そう感じるんだね。今日は家でゆっくりしようね」 | 「行かないと将来困るよ、すぐ行きなさい!」 |
子どもが話したがらない時 | 「話したくなったらいつでも聞くので、声かけてね」 | 「なんで話してくれないの!」 |
宿題や勉強に手をつけない時 | 「ちょっと一緒にやってみようか」 | 「早くやらないと怒られるよ!」 |
気分が落ち込んでいる時 | 「今日はゆっくり休もうね、気分が落ち着いたらやろう」 | 「元気出しなさい、暗い顔しないで!」 |
小さな成功を報告した時 | 「すごい!よく頑張ったね」 | 「それくらいできて当然でしょ!」 |
保護者が避けたいNGな対応は、次の章で詳しく見ていきましょう。
保護者が避けたいNG対応とその理由

子どもが「めんどくさい」と口にしたとき、保護者の対応次第で状況は大きく変わります。しかし、善意からの行動でも逆効果になることがあります。この章では、不登校の子どもに対して避けるべき対応と、その理由について解説します。
頭ごなしに叱る・否定や決めつけ
「怠けている」「甘えている」と頭ごなしに叱ったり決めつけたりするのは、不登校の子どもにとって大きな負担です。実際には怠けではなく、心のエネルギーが不足している状態であり、本人もどうしていいか分からずに苦しんでいる状態で、そこに否定の言葉を浴びせると、「自分はダメだ」という自己否定感がさらに強まり、親への信頼も失われてしまいます。まずは気持ちを理解する姿勢を持ち、「つらいんだね」「そう感じているんだね」と共感を示すことが大切で、叱責よりも共感と理解が、子どもの安心と回復につながります。
無理やり学校に行かせようとする
不登校は単なるサボりではなく、心身のSOSの現れです。にもかかわらず、強引に登校を促したり、力ずくで学校へ連れて行こうとすると、子どもはますます心を閉ざし、状況は悪化してしまう可能性もあり、仮に一時的に登校できたとしても、根本的な問題解決にはつながりません。不登校の背景には、不安や自己否定、対人関係のストレスなど、多様な要因が隠れています。だからこそ、無理をさせるのではなく、子どものペースや回復のタイミングを尊重して見守る姿勢が大切で、周囲が焦らず支え続けることで、自然と次の一歩につながります。
他社と比較したり、プレッシャーをかけたりする
「みんな頑張っているよ」「お兄ちゃんはちゃんとやっていたよ」など、他社と比較するような言葉はプレッシャーとなるので避けるようにしましょう。不登校の子どもはすでに自分を責め、「できない自分」に苦しんでいることが多いため、比較されることでさらに自己否定感が強まってしまいます。その結果、親への信頼も揺らぎ、心を閉ざしてしまう恐れがあります。保護者が意識すべきは「他の子と比べること」ではなく、「その子自身の小さな成長や変化を認めること」で、プレッシャーではなく承認と共感を積み重ねることが、回復の大きな支えになります。
不登校の子どもの「めんどくさい」を理解することの重要性
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子どもの「めんどくさい」という言葉を正しく理解することは、親に安心をもたらしますし、子どもに余裕を与え、家庭全体に前向きな雰囲気を広げることにつながります。この章では、その理解がもたらす3つの大切な効果について解説します。
理解することで親の気持ちが軽くなる
子どもが「めんどくさい」と言うと、多くの親は「怠けているのでは」「このままで大丈夫だろうか」と不安に駆られます。しかし、これまで述べて来たとおり、この言葉の裏には無気力や不安、自己否定感など複雑な心理が隠れており、決してサボりではありません。そのことを理解できると、「子どもは苦しんでいる最中なのだ」と受け止められるようになり、親の心配や焦りが和らぎます。親が落ち着きを取り戻すことで、感情的にぶつからずに子どもと向き合えるようになるので、まずは親自身が安心することが、子どもとの関係改善の出発点になるのです。
親の余裕が、子どもの安心につながる
親が冷静に落ち着いて接すると、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じやすくなり、その安心感が心を開くきっかけになります。安心があるからこそ、少しずつ本音を話したり、自分のペースで行動を起こしたりできるのです。逆に、親が不安や焦りから強く叱ったり急かしたりすると、子どもは「理解されない」と感じて心を閉ざし、回復は遠のいてしまいます。親が余裕を持つことは単に我慢するという意味ではなく、子どもの気持ちを理解し、共に歩もうとする姿勢を示すことです。その姿勢こそが子どもに安心を与え、心のエネルギーを回復させる土台になります。
安心がひろがることで、家庭に前向きな空気がつくられる
親が子どもの気持ちを理解し、子どもも安心を感じられるようになると、その安心は家庭全体へと広がっていきます。親子の関係が落ち着けば自然と会話も増え、家の中に穏やかで前向きな雰囲気が生まれます。家庭が「安心できる居場所」と感じられることは、子どもにとって大きな支えとなり、外の世界や新しい挑戦に向かう意欲へとつながります。こうして芽生えた前向きな雰囲気は子どもの回復を後押しするだけでなく、家族全体を支える力にもなるのです。安心が積み重なり、家庭に広がっていく過程そのものが、次の一歩を踏み出すための大切なきっかけになると言えます。
まとめ
子どもの「めんどくさい」という言葉は、単なる怠けや甘えではなく、心のSOSのサインです。親が落ち着いて受け止め、家庭を安心できる居場所にすることで、子どもは少しずつ心を開き、自分のペースで回復へ向かうことができます。こうした関わりを通じて、家庭には穏やかで前向きな空気が広がり、親子双方の安心が積み重なります。完璧を求めず、日々の小さな寄り添いを重ねることが、子どもの回復と家庭の安定につながるのです。