「どれだけ練習しても計算ができない」「九九がどうしても覚えられない」といった悩みを抱えていませんか?
周囲からは「努力不足」や「ただの算数苦手」と思われがちですが、実は算数障害(ディスカリキュリア)という発達障害の一種である可能性があります。算数障害は、全般的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、数字や計算に関する学習だけが極端に困難な状態を指します。
この記事では、算数障害の定義や原因、子供から大人まで見られる具体的な症状、そして適切な診断方法や対処法について、分かりやすく解説します。
算数障害とディスカリキュリアの基礎知識

まずは、算数障害とはどのようなものなのか、その基本的な定義と脳の仕組みについて解説します。
学習障害の一種である算数障害の定義
算数障害(ディスカリキュリア)とは、学習障害(LD)の一種で、読む・書く・計算するといった学習能力のうち、特に「算数・数学」に関する能力に限定して困難が生じる障害です。
文部科学省の定義によれば、全般的な知的発達に遅れはないものの、計算や図形の理解、推論などが極端に苦手な状態を指します。単なる「算数が苦手な人」との違いは、本人の努力や学習環境に関わらず、数字の概念そのものの理解が難しいという点にあります。
算数以外にも、読み書きなど特定の学習だけに困難が生じるケースがあります。学習障害全体の特徴や種類について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
ディスカリキュリアが起こる脳の仕組み
算数障害が起こる原因は、本人のやる気の問題ではなく、脳の機能的な特性にあると考えられています。
具体的には、脳の「頭頂葉」と呼ばれる部分にある、数や量を司る領域の働きが関係しています。ディスカリキュリアを抱える人は、この領域のネットワークが一般的な人と異なるため、数字を「量」として直感的に捉えることが困難です。例えば、「5」という数字を見たときに、それが「りんご5個分」という量と結びつきにくいといった特性があります。
計算ができない症状とセルフチェック項目

算数障害の症状は多岐にわたります。以下の項目に当てはまるものが多い場合、障害の可能性を考慮し、専門機関への相談を検討してみてください。
数字の概念や大小比較が困難なケース
数字そのものの意味を理解することに難しさを感じる場合があります。
暗算や筆算でミスを繰り返す具体的な例
計算の手順を覚えたり、正確に実行したりすることが困難です。
九九や公式がどうしても覚えられない状態
暗記による学習が極端に苦手なのも大きな特徴です。
学習障害のある子どもは、繰り返し暗記するだけでは十分に定着しないことがあります。本人の特性に合わせた具体的な勉強方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
算数が苦手な原因と発達障害との関係

算数障害は単独で現れることもありますが、他の発達障害と併存しているケースも少なくありません。
ADHDや自閉スペクトラム症との併存
算数障害は、ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)と併存しやすいことが知られています。
ADHDを併存している場合、不注意による計算ミスや、手順の飛ばしが目立ちます。一方、ASDを併存している場合は、文章題の意図を読み取ることや、抽象的な概念を理解することに苦労する傾向があります。
計算の苦手さだけでなく、注意力やコミュニケーション、学習全般で気になる特徴が見られる場合は、発達障害の特性についても理解しておくと、本人に合ったサポートを考えやすくなります。
ワーキングメモリの低さが影響する背景
計算には、情報を一時的に脳内に保持して処理するワーキングメモリという能力が不可欠です。
算数障害の人は、このワーキングメモリの容量が小さい、あるいは活用が苦手な場合が多いです。例えば、繰り上がりの数字を覚えておきながら次の計算を行うという「二つのことを同時に行う作業」で脳がパンクしてしまい、結果として計算ができない状態に陥ります。
数学が極端に苦手な場合に疑われる病気
「数学ができないのは病気なのではないか」と悩む方もいますが、医学的には「限局性学習症(SLD)」という診断名が使われます。
また、視覚認知(目で見た情報を処理する力)に課題がある場合も、図形問題やグラフの理解が困難になります。数学が極端に苦手な背景には、こうした複数の認知特性が絡み合っていることが多いのです。
子供から大人まで年代別の困りごとと特徴

算数障害は生涯続く特性ですが、年代によって直面する困りごとは変化します。
小学生で現れる算数障害のサイン
小学校低学年から中学年にかけて、周囲との差が顕著になります。
大人が仕事や日常生活で直面する困難
大人になってから「自分は算数障害かもしれない」と気づくケースも増えています。
算数障害の診断方法と受診すべき専門機関

適切な支援を受けるためには、まず専門家による診断を受けることが第一歩です。
小児科や精神科での診断テストの内容
診断では、知能検査(WISC-IVやWAIS-IVなど)や、読み書き・計算の到達度を確認する検査が行われます。
これらの算数障害における診断テストを通じて、全般的な知能指数(IQ)と、算数能力の乖離を確認します。特定の分野だけが著しく低い場合に、算数障害と診断される可能性が高まります。
病院選びの基準と相談窓口の探し方
どこに相談すべきか迷った場合は、以下の窓口を検討してください。
(参考:発達障害者支援センター- 厚生労働省)
学習の苦手を克服する対処法と支援ツール

算数障害は「根性」で治るものではありません。大切なのは、苦手な部分をツールや工夫で補うという考え方です。
視覚的な補助教材や電卓を活用する方法
抽象的な数字を、目に見える形に置き換えることが有効です。
個別指導や合理的配慮を受ける重要性
学校や職場では、特性に合わせた合理的配慮を求めることができます。
学校での配慮例
職場での配慮例
算数障害は治るのかという疑問への回答
結論から申し上げますと、算数障害は脳の特性であるため、完全に「治る」という性質のものではありません。
しかし、適切なトレーニングや補助ツールの活用によって、日常生活や学習での困りごとを大幅に減らすことは十分に可能です。大切なのは、できないことを責めるのではなく、「どうすれば工夫して乗り越えられるか」という前向きな視点を持つことです。
算数だけでなく、文字を書く・読むなどにも困難がある場合は、学校生活全体で本人に合った支援方法を考えることが重要です。学習障害のある子どもへの具体的な接し方や支援については、以下の記事も参考になります。
まとめ
算数障害(ディスカリキュリア)は、決して本人の努力不足や知能の問題ではありません。脳の特性によって、数字の処理に特有の困難を抱えている状態です。
もし、あなたやあなたのお子さんが「計算が苦手」「数字が覚えられない」ことで深く悩んでいるのなら、まずは専門機関に相談し、自身の特性を正しく知ることから始めてみてください。
算数障害という正体が分かることで、適切な支援ツールや学習法に出会うことができ、これまでの「生きづらさ」を解消するきっかけになるはずです。一人で抱え込まず、周囲のサポートを受けながら、自分らしい学び方や働き方を見つけていきましょう。
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