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高校生の起立性調節障害|原因・症状から親の対応まで解説

起立性調節障害 高校生 起立性調節障害

「最近、うちの子が朝起きられなくて学校を休みがち…」 「立ちくらみや頭痛を頻繁に訴えるけど、ただの怠けなのかな?」

高校生のお子さんがつらそうな姿を見ていると、親として何とかしてあげたいと思う一方で、
出席日数や単位、進級への影響が気になり、不安が大きくなりますよね。もしかしたら、その症状は 起立性調節障害(OD) かもしれません。

この記事では、
高校生のお子さんを持つ保護者の方に向けて、起立性調節障害の基本に触れつつ、

  • 高校生活で困りやすいポイント
  • 学校との連携・配慮の伝え方
  • 不登校や進路不安への向き合い方

を中心に、実践的に解説します。

起立性調節障害とは

まず、起立性調節障害がどのような病気なのかを正しく理解しましょう。起立性調節障害は、決して怠けや気持ちの問題ではなく、身体の病気です。

自律神経の働きと病気の仕組み

私たちの体には、血圧や心拍数、体温などを無意識のうちにコントロールしている「自律神経」という神経があります。健康な人であれば、寝ている状態から急に立ち上がっても、自律神経が瞬時に働き、脳への血流が減らないように血管を収縮させて血圧を維持します。

しかし、起立性調節障害では、この自律神経のバランスが崩れてしまい、立ち上がった時に血圧が低下したり、心拍数が上がりすぎたりします。その結果、脳や全身への血流が不足し、立ちくらみやめまい、倦怠感といった様々な症状が引き起こされるのです。特に、体の成長が著しい思春期に発症しやすいことが知られています。

思春期に多い4つのサブタイプ

起立性調節障害は、血圧や心拍数の反応の仕方によって、主に4つのタイプ(サブタイプ)に分けられます。複数のタイプを合併することもあります。

  • 起立直後性低血圧(INOH)
    立ち上がった直後に血圧が大幅に下がり、回復が遅れるタイプです。立ちくらみや失神を起こしやすいのが特徴です。

  • 体位性頻脈症候群(POTS)
    立ち上がった後に血圧はあまり下がりませんが、心拍数だけが異常に増加するタイプです。動悸や息切れ、倦怠感を強く感じます。

  • 血管迷走神経性失神(VVS)
    長時間立ち続けたり、精神的なストレスや痛みを感じたりしたときに、急に血圧が低下して意識を失ってしまうタイプです。いわゆる「脳貧血」もこれに含まれます。

  • 遷延性起立性低血圧(Delayed OH)
    立ち上がってから数分〜10分ほど経過した後に、徐々に血圧が低下してくるタイプです。

怠けや精神的な問題との違い

朝起きられない、午前中はぐったりしているといった症状から、「怠けている」「学校に行きたくないだけでは?」と周囲から誤解されやすいのが、この病気の最もつらい点です。

しかし、これまで説明した通り、起立性調節障害は本人の意思ではコントロールできない自律神経の機能不全が原因です。お子さん自身も「起きなければいけないのに起きられない」と、自分を責めて苦しんでいます。親御さんだけでも、まずは「これは病気なのだ」と理解し、お子さんの味方になってあげることが何よりも大切です。

起立性調節障害は「怠け」や「甘え」と誤解されやすい病気です。しかし、実際には本人も強い苦しさを抱えています。不登校に対する誤解や周囲との向き合い方については、こちらの記事も参考にしてください。

高校生に多い症状とセルフチェック

起立性調節障害の症状は多岐にわたります。高校生のお子さんによく見られる症状を知り、当てはまるものがないか確認してみましょう。

朝起きられない・午前の強い倦怠感

最も代表的な症状が、朝なかなか起きられないことです。これは、夜間に優位になる副交感神経から、日中に優位になる交感神経への切り替えがうまくいかないために起こります。

無理やり起こしても、午前中は頭が働かず、強い倦怠感やだるさが続きます。しかし、午後になると徐々に交感神経が活発になり、症状が軽快して元気に活動できることも少なくありません。

立ちくらみ・めまい・頭痛・失神

立ち上がった瞬間にクラっとする「立ちくらみ」や「めまい」も非常に多い症状です。ひどい場合には、そのまま意識を失って倒れてしまう「失神」を起こすこともあります。

また、脳への血流が不安定になることで、締め付けられるような「頭痛」が起こることもあります。特に午前中に症状が強く出やすい傾向があります。お風呂上がりなど、体が温まって血管が拡張している時にも立ちくらみは起こりやすくなります。

その他の症状(腹痛・吐き気・動悸)

脳への血流不足だけでなく、全身の血流が悪くなることで、以下のような様々な症状が現れることがあります。

  • 食欲不振
  • 腹痛、吐き気
  • 動悸、息切れ
  • 乗り物酔いしやすい
  • 少し動いただけでも疲れやすい
  • 集中力・思考力の低下
  • イライラする、気分が落ち込む

これらの症状が複数重なることで、日常生活や学業に大きな支障をきたします。

自宅でできる10項目のチェックリスト

日本小児心身医学会が作成したチェックリストを参考に、お子さんの状態を確認してみましょう。以下の項目のうち、3つ以上当てはまる、または2つでも症状が強ければ起立性調節障害の可能性が考えられます。

  1. 立ちくらみやめまいがする
  2. 立つと気分が悪くなる、ひどいと失神する
  3. 入浴時や嫌なことを見聞きした時に気分が悪くなる
  4. 少し動くと動悸や息切れがする
  5. 朝なかなか起きられず、午前中は調子が悪い
  6. 顔色が青白い
  7. 食欲がない
  8. お腹が痛い
  9. だるい、疲れやすい
  10. 頭痛がする

このチェックリストはあくまで目安です。当てはまる項目が多ければ、一度専門の医療機関に相談することをおすすめします。

起立性調節障害の主な原因

起立性調節障害は、単一の原因で発症するわけではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。

身体的成長と自律神経のアンバランス

思春期は、身長が急激に伸び、心臓や血管も大きく成長する時期です。この急激な身体の変化に、自律神経の発達が追いつかなくなることが、起立性調節障害の最も大きな身体的要因とされています。心臓から脳までの距離が長くなるのに、血液を送り出すポンプ機能の調整がうまくいかなくなるのです。

心理社会的ストレス(学校・家庭環境)

自律神経は、精神的な状態にも大きく影響を受けます。高校生は、勉強や進路の悩み、友人関係、部活動など、様々な心理社会的ストレスにさらされています。これらのストレスが引き金となったり、症状を悪化させたりするケースは少なくありません。家庭内の不和や環境の変化も影響することがあります。

遺伝的要因と生活習慣の乱れ

起立性調節障害は、遺伝的な体質も関係していると考えられており、親子で同じような症状を持つケースも見られます。また、以下のような生活習慣の乱れも、自律神経のバランスを崩す原因となります。

  • 夜更かし、朝寝坊
  • 運動不足による筋力低下
  • 水分や塩分の摂取不足
  • 長時間のゲームやスマートフォンの使用

病院での診断は何科?受診の目安

セルフチェックで起立性調節障害が疑われた場合、どこに相談すればよいのでしょうか。受診の目安と診療科について解説します。

受診すべき診療科(小児科・内科)

まずはお子さんのかかりつけの小児科、または内科を受診しましょう。起立性調節障害は子供に多い病気のため、多くの小児科医が診断・治療の経験を持っています。かかりつけ医がいない場合は、お近くの小児科や、高校生であれば内科でも対応してもらえます。

大切なのは、他の病気が隠れていないかを確認することです。めまいや頭痛の原因には、貧血や心臓、耳、脳の病気など様々な可能性があるため、まずは基本的な診察と検査を受けることが重要です。

思春期外来や専門外来という選択肢

より専門的な診断や治療を希望する場合には、「思春期外来」や「起立性調節障害専門外来」を設置している病院を探すのも良いでしょう。これらの外来では、身体的な問題だけでなく、心理的な側面も含めて総合的にサポートしてくれる場合が多いです。かかりつけ医からの紹介状が必要なこともあるため、まずは相談してみましょう。

新起立試験などの具体的な検査方法

病院では、問診や診察に加えて、起立性調節障害を診断するために以下のような検査が行われます。

  • 新起立試験
    ベッドに10分間横になった後、立ち上がって10分間、血圧と脈拍の変化を測定する検査です。起立性調節障害の診断において最も重要な検査となります。

  • 血液検査・尿検査
    貧血や甲状腺機能異常など、似たような症状を引き起こす他の病気がないかを確認します。

  • 心電図検査
    心臓の病気が隠れていないかをチェックします。

これらの検査によって、症状が自律神経の機能不全によるものかどうかを客観的に評価し、診断を確定します。

起立性調節障害だけでなく、不登校の背景に心身の不調が隠れているケースも少なくありません。「病院を受診すべきか迷っている」「子どもが受診を嫌がる」という場合は、以下の記事も参考になります。

家庭での治し方と治療法の全体像

起立性調節障害の治療は、薬物療法よりも生活習慣の改善を中心とした「非薬物療法」が基本となります。ご家庭でできる「治し方」を学び、根気強く取り組んでいきましょう。

基本となる非薬物療法(生活習慣改善)

毎日の生活の中で少しずつ工夫を重ねることが、症状改善への一番の近道です。

水分・塩分の摂取目安と方法

血液の量を増やすことで、血圧の低下を防ぎます。意識的に水分と塩分を摂るようにしましょう。

  • 水分
    1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに摂取します。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンクも効果的です。

  • 塩分
    1日に10g程度を目安に、普段の食事より少し多めに摂ることを心がけます。味噌汁やスープ、梅干しなどを食事に取り入れるのがおすすめです。

就寝・起床リズムの整え方

体内時計を整え、自律神経のバランスを正常に近づけます。

  • 早寝早起きを心がける
    夜更かしは避け、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけましょう。

  • 休日の寝坊は2時間まで
    平日の疲れから休日に寝だめしたくなりますが、生活リズムが崩れる原因になります。平日との差は2時間以内に留めましょう。

  • 起床後は日光を浴びる
    朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、交感神経への切り替えがスムーズになります。

日中の軽い運動と筋力トレーニング

下半身の筋力は、血液を心臓に戻すポンプの役割を果たします。筋力低下は症状を悪化させるため、無理のない範囲で体を動かしましょう。

  • ウォーキング
    1日15~30分程度の散歩から始めましょう。体調の良い時間帯に行うのがポイントです。

  • 下半身の筋トレ
    かかとの上げ下ろし運動や、ゆっくりとしたスクワットなどが効果的です。

症状を和らげる薬物療法(昇圧剤など)

非薬物療法を続けても症状の改善が見られない場合には、薬物療法が検討されます。血圧を上げる「昇圧剤」などが処方されることがありますが、あくまで症状を和らげるための補助的な治療です。医師の指示に従い、正しく服用することが大切です。

光療法や心理カウンセリングの活用

薬物療法以外の選択肢として、以下のような治療法もあります。

  • 光療法
    朝、強い光を浴びることで体内時計を強制的にリセットし、覚醒を促す治療法です。

  • 心理カウンセリング
    ストレスが症状の大きな要因となっている場合に有効です。カウンセラーとの対話を通じて、ストレスへの対処法を学び、心の負担を軽くします。

親のサポートと学校生活での工夫

お子さんが安心して治療に専念するためには、ご家族の理解とサポートが不可欠です。特に、親御さんの対応と学校との連携が重要な鍵となります。

「無理やり起こさない」朝の対応法

朝起きられないお子さんを見ると、つい「早く起きなさい!」と叱ってしまいたくなるかもしれません。しかし、無理やり起こすことは、血圧が極端に低い状態の体に鞭を打つことになり、かえって症状を悪化させます。

  • 起こす30分前に部屋を暖める
  • カーテンを開けて日光を入れる
  • 好きな音楽をかける、優しく声をかける
  • 枕元に水分や塩分タブレットを置いておく
  • 頭を少し高くして寝かせる

このように、本人が少しでも楽に起きられる環境を整えてあげましょう。

「遊びには行ける」理由と周囲への説明

「学校は休むのに、午後は友達と遊びに行けるなんて…」と、矛盾しているように感じるかもしれません。これは、起立性調節障害の症状が午前中に最も重く、午後になると軽快するという特徴があるためです。

決して仮病や怠けではありません。むしろ、本人が楽しめる活動をすることは、気分転換やストレス解消になり、治療にも良い影響を与えます。周囲から誤解された場合は、「この病気は、午前中に調子が悪くて、午後になると元気になる特徴があるんです」と、病気の特性として冷静に説明できると良いでしょう。

学校への説明と配慮してほしいこと

学校生活をスムーズに送るためには、学校側の理解と協力が欠かせません。診断を受けたら、担任の先生や養護教諭に以下の点を伝え、必要な配慮をお願いしましょう。

  • 【病名】
    「起立性調節障害」という正式な病名と、医師の診断書を提出する。

  • 【主な症状】
    朝起きられないこと、午前中の倦怠感、立ちくらみなど、お子さんの具体的な症状を説明する。

  • 【症状が出やすい状況】
    朝礼や体育の授業など、長時間立ち続ける場面で配慮が必要なことを伝える。

  • 【お願いしたい配慮の具体例】
    • 遅刻や欠席への理解
    • 体育の見学許可
    • 授業中に気分が悪くなった際の保健室利用
    • テストを別室で受けさせてもらう、など

先生に病気を正しく理解してもらうことが、お子さんの学校での居場所を守ることに繋がります。

学研WILL学園では、起立性調節障害や不登校に悩むお子さま・保護者様からのご相談を数多くお受けしています。学校との関わり方や今後の進路について不安がある場合は、一人で抱え込まずお気軽にご相談ください。

不登校を防ぐためのコミュニケーション

学校を休みがちになることで、本人は学業の遅れや友人関係に不安を感じ、自己肯定感が低下しがちです。これが長期化すると、二次的に不登校やうつ状態に陥る危険性もあります。

親として最も大切なのは、お子さんのつらさに共感し、焦らせないことです。「早く治して学校に行きなさい」というプレッシャーは逆効果。「今はゆっくり休む時だよ」「あなたのペースでいいんだよ」と伝え、安心できる家庭環境を作ってあげましょう。

不登校になりそうな段階で見られるサインや、親ができる早めの対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。

起立性調節障害による欠席や遅刻が続くと、「このまま出席日数が足りなくなったらどうなるのだろう」「留年の対象になってしまうのでは」と不安になる方も多いでしょう。

高校で留年が決まる具体的な条件や、出席日数・成績の基準については、こちらの記事で分かりやすく整理しています。

起立性調節障害のよくある質問

最後に、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。

いつ治る?どのくらいで改善する?

起立性調節障害は、多くの場合、身体の成長が落ち着く高校卒業から20歳頃までに自然に改善していきます。治療を開始してから数ヶ月で症状が軽くなるケースもあれば、数年単位で付き合っていくケースもあります。個人差が非常に大きいですが、適切な治療と生活習慣の改善を続けることで、多くは快方に向かう病気です。

ただし、症状の改善には時間がかかることもあり、その間に学校へ通うことが難しくなるケースもあります。進級や卒業、進路への不安がある場合は、起立性調節障害の子どもが選べる進学先についても知っておくと安心です。

中学生や大人との症状の違いは?

基本的な症状や原因は中学生でも高校生でも大きくは変わりません。ただ、高校生の場合は、大学受験や就職といった将来へのプレッシャーが、中学生以上に大きなストレスとなり、症状に影響を与えることがあります。また、大人の起立性調節障害は、子供の頃から症状が続いているケースや、他の病気やストレスが原因で発症するケースがあります。

完治はする?再発の可能性は?

症状が完全になくなり、普段の生活に支障がなくなる状態を「完治」と捉えることはできます。しかし、もともと自律神経が乱れやすい体質を持っている場合、過労やストレス、不規則な生活が続くと症状が再発する可能性はあります。病気が改善した後も、健康的な生活習慣を維持することが大切です。

まとめ

今回は、高校生の起立性調節障害について、その原因や症状、そして親の対応までを詳しく解説しました。

  • 起立性調節障害は、自律神経の不調による身体の病気であり、怠けではない。
  • 朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感などが主な症状で、午前中に悪化しやすい。
  • 治療の基本は、水分・塩分摂取、生活リズムの改善、適度な運動といった非薬物療法。
  • 親は「無理やり起こさない」「本人のペースを尊重する」など、子供に寄り添う姿勢が大切。
  • 学校と連携し、必要な配慮を求めることで、お子さんの負担を軽減できる。

お子さんのつらい症状を目の当たりにし、先の見えない不安を感じているかもしれません。しかし、起立性調節障害は正しい知識を持って適切に対応すれば、必ず改善していく病気です。

まずはこの記事で紹介した家庭での対処法を試しつつ、一人で抱え込まずに、かかりつけ医や専門医、学校の先生に相談してください。周りのサポートを得ながら、お子さんと一緒に一歩ずつ前に進んでいきましょう。