
「起立性調節障害で子どもが学校に通いづらい」
「朝起きられなくて、遅刻や欠席が増えている」
「高校へ進学しても通い続けられるのか心配」
このような悩みを抱えているお子さんや保護者の方もいるのではないでしょうか。
朝や午前中に体調が悪く、学校に通うことが難しい状態が続いていても、必ずしも本人の努力不足や生活態度だけが理由とは限りません。起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)をはじめとする身体の状態が関係している可能性もあります。
起立性調節障害は思春期にみられやすく、午前中に症状が強く現れることがあるため、遅刻や欠席が増え、高校進学について不安を感じるケースもあります。
一方で、ODがあるからといって高校へ進学できないわけではありません。全日制高校のほか、定時制高校や通信制高校など、さまざまな学び方があります。
大切なのは、「ODならこの高校」と決めるのではなく、本人の症状や生活リズムに合った学校を選ぶことです。
この記事では、起立性調節障害の基本的な症状や治療、ODのある子どもが高校進学で気を付けたいポイント、定時制高校や通信制高校などの特徴について詳しく解説します。
起立性調節障害とは

起立性調節障害(OD)は、立ち上がったときの血圧や心拍数など、循環器系を調節する自律神経の働きがうまくいかず、さまざまな身体症状が現れる病気です。
私たちの身体では、横になった状態から立ち上がると、重力によって血液の分布が変化します。通常は自律神経などの働きによって血圧や心拍数が調節されますが、ODではこうした調節がうまく働かなくなる場合があります。
その結果、次のような症状が現れることがあります。
症状の種類や程度は人によって異なり、日によって体調に波がある場合もあります。
また、ODには複数のタイプがあります。起立した際の血圧や心拍数などの変化によって、起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経性失神、遷延性起立性低血圧などに分けて評価されることがあります。
ODには、起立時の循環調節の問題だけでなく、水分摂取不足や活動量の低下、心理社会的なストレスなど、複数の要因が関係する場合があります。
ストレスなどによって症状が強くなることはありますが、ODそのものを「気持ちの問題」「本人の甘え」と考えるのは適切ではありません。
日本小児心身医学会では、軽症例を含めると中学生の約10%にODがみられ、不登校の子どもの約3~4割にODが併存するとしています。
朝起きられなくても「怠け」とは限らない
ODでは、午前中に症状が強く、午後になると体調が改善することがあります。
そのため、
「朝は学校に行けないのに、午後には元気にしている」
「学校を休んでいるのに、夕方になるとゲームをしている」
といった様子から、「本人が学校へ行きたくないだけではないか」と周囲が感じてしまうケースもあります。
しかし、ODは身体の循環調節に関係する病気であり、本人の意思だけで症状を自由にコントロールできるものではありません。
体調不良を努力不足や性格の問題として責められることが、本人の心理的な負担になる場合もあります。
まずは、「どうして起きられないのか」「なぜ学校へ行けないのか」を本人だけの責任にせず、身体の状態を確認することが大切です。
起立性調節障害が疑われる場合は医療機関へ
朝起きられない、立ちくらみや頭痛、強い倦怠感などが続き、学校生活や日常生活に支障が出ている場合は、小児科などの医療機関への相談を検討しましょう。
ODでは、症状だけを見て診断するわけではありません。
貧血や心疾患、神経疾患、甲状腺疾患など、同じような症状を引き起こすほかの病気がないかを確認したうえで、必要に応じて「新起立試験」を行い、起立した際の血圧や心拍数などの変化を調べます。
そのため、
「朝起きられないからODだろう」
「頭痛があるから起立性調節障害だ」
と自己判断することは避け、症状が続いている場合には適切な診察を受けることが大切です。
起立性調節障害ではどのような治療・対応をする?
ODへの対応方法は、症状や重症度、生活状況によって異なります。
一般的には、
などを組み合わせながら対応します。
水分や塩分をどの程度摂取するか、どのくらい運動するかなどは、本人の体調や持病によっても異なります。
自己判断で無理をするのではなく、医師などと相談しながら本人に合った方法を取り入れることが大切です。
発達特性や心の不調があわせてみられることもある
起立性調節障害(OD)のあるお子さんでは、身体症状だけでなく、気分の落ち込みや不安などの心理的な不調があわせてみられることがあります。
特に、朝起きられないことや遅刻・欠席が続くことについて、周囲から「怠けている」「努力が足りない」などと誤解されると、本人が自信を失ったり、学校生活への不安が強くなったりする場合があります。こうした状況が長く続くことで、抑うつ状態や不安症状などの二次的な心の不調につながることもあるため注意が必要です。
また、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達特性があるお子さんに、ODの症状があわせてみられる場合もあります。
ただし、ODが発達障害を引き起こすわけでも、発達障害があれば必ずODになるわけでもありません。身体症状、発達特性、学校での困りごと、心理的なストレスなどが複雑に影響しているケースもあります。
そのため、ODの症状だけを見るのではなく、「気分の落ち込みが続いていないか」「不安が強くなっていないか」「学習や集団生活で以前から困りごとがなかったか」など、本人の心身の状態を幅広く確認することが大切です。
必要に応じて、小児科などの医療機関だけでなく、学校の相談窓口や心理・発達面の専門機関とも連携しながら、本人に合った支援を検討していきましょう。
起立性調節障害の子どもの高校進学で気を付けるべきことは

起立性調節障害のあるお子さんが高校進学を考える際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
特に確認しておきたいのが、登校時間・通学頻度・欠席や遅刻への対応・単位取得の方法です。
高校では、学校が定める教育課程に沿って学習し、卒業要件を満たす必要があります。
そのため、ODによって遅刻や欠席が続く場合、学校の仕組みによっては科目の履修や単位取得に影響する可能性があります。
ただし、「出席日数が少ない=高校を卒業できない」と一律に決まるわけではありません。単位認定の方法や欠席時の対応は学校や科目によって異なります。
高校選びでは、次のような点を事前に確認しておくことが重要です。
朝の体調と登校時間が合っているか
ODでは、午前中に症状が強く現れる場合があります。
そのため、
などを確認しましょう。
朝に症状が強いお子さんの場合、毎日早朝から登校する学校は負担になる可能性があります。
一方で、症状が比較的安定していたり、学校側が柔軟に対応してくれたりする場合には、全日制高校に通えるケースもあります。
通学頻度や学校までの距離も確認する
「何時に登校するか」だけでなく、「どれくらい学校へ通う必要があるか」も重要です。
例えば、
などを確認しましょう。
電車やバスを長時間利用する場合、体調によっては通学そのものが負担になることがあります。
遅刻や欠席への対応を確認する
高校では、必要な科目を履修し、卒業に必要な単位を修得しなければなりません。
高校卒業には、学校が定める卒業要件を満たしたうえで、74単位以上を修得することが必要です。
ただし、実際にどの程度の出席が必要なのか、遅刻や欠席が続いたときにどのような対応が取られるのかは、学校や科目によって異なります。
学校説明会や個別相談などで、
などを確認しておきましょう。
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起立性調節障害の子どもを受け入れてくれる高校とは

ODがあるからといって、進学できる高校が一つに限定されるわけではありません。
全日制高校に通える場合もありますし、生活リズムや症状によっては、定時制高校や通信制高校のほうが通いやすい場合もあります。
ここからは、それぞれの高校の特徴を見ていきましょう。
全日制高校の特徴
全日制高校は、一般的に平日の午前中から授業が始まり、日中に授業を受けるスタイルです。
そのため、朝に症状が強いODのお子さんの場合、毎朝決まった時間に登校することが負担になる可能性があります。
一方で、ODだから全日制高校に通えないわけではありません。
本人の体調が比較的安定している場合や、
といった環境が整っている場合には、全日制高校で学び続けられるケースもあります。
希望する学校がある場合には、入学前に個別相談を利用し、必要な配慮について確認しておくとよいでしょう。
①定時制(多部制・単位制)高校の特徴
定時制高校は、一般的な全日制高校とは異なる時間帯で授業を受けられる学校です。
学校ごとの授業時間
定時制高校には、例えば次のようなタイプがあります。
朝に症状が強いお子さんの場合、午後や夜から授業を受けられる学校が生活リズムに合うことがあります。
卒業について
定時制課程の修業年限は3年以上です。
以前は4年間で卒業する学校も多くありましたが、現在は単位制などを採用し、必要な単位を修得することで3年間で卒業できる学校もあります。
卒業までの年数や授業時間、登校日数などは学校によって異なるため、個別に確認することが大切です。
どのような人が通っている?
定時制高校には、
など、さまざまな背景を持つ人が通っています。
ODのお子さんにとっても、午後や夜間を中心に通える定時制高校は選択肢の一つです。
ただし、定時制高校でも週5日程度通学する学校があります。
「朝からでなければ通える」というだけでなく、毎日の通学そのものが本人にとって負担にならないかも確認しましょう。
②通信制高校の特徴
通信制高校は、自宅などでの自学自習を中心に、高校卒業を目指す学校です。
主に、
を組み合わせて学びます。
出席について
通信制高校では、全日制高校のように毎日決まった時間に学校へ通わない学び方が可能です。
そのため、
「午前中は体調が安定しない」
「日によって登校できるかどうかが変わる」
といったODのお子さんにとって、比較的検討しやすい環境といえます。
ただし、通信制高校でもスクーリングへの参加は必要です。
スクーリングについては、
など、学校によって仕組みが大きく異なります。
「通信制高校ならほとんど学校へ行かなくてよい」と考えるのではなく、
などを確認することが重要です。
卒業について
通信制高校を卒業するためには、原則として高校に3年以上在籍し、必要な単位を修得するなど、学校が定める卒業要件を満たす必要があります。
自分のペースで学習できることはメリットですが、レポートの提出や学習スケジュールを自分で管理する必要があるため、一人で学習を進めることが難しい場合もあります。
そのような場合には、通信制高校での学習を支援するサポート校を利用する方法もあります。
定時制高校と通信制高校のどちらがおすすめ?

起立性調節障害のあるお子さんには、定時制高校や通信制高校が比較的通いやすい場合があります。
ただし、
「ODだから定時制高校か通信制高校を選ぶべき」
と一律に考える必要はありません。
例えば、
など、本人の症状によって適した環境は変わります。
重要なのは高校の名称や種類ではなく、
などを確認することです。
本人の希望も聞きながら、できれば実際に学校見学や個別相談を利用して判断しましょう。
通信制高校とあわせて検討できるサポート校

通信制高校で学ぶ場合、もう一つの選択肢として「サポート校」を利用する方法があります。
サポート校は高校そのものではなく、通信制高校に在籍する生徒の学習や生活、進路などを支援する教育施設です。
例えば、
などを受けられる場合があります。
ただし、サポート校はODを診断・治療する医療機関ではありません。
ODの診断や治療は医療機関、学校生活や学習面の支援は高校やサポート校というように、それぞれの役割を分けて考えることが大切です。
医療と並行して学校での「環境調整」を考えることも大切

ODへの対応では、医療機関で診断や治療を受けることに加え、家庭や学校で本人への負担を減らす環境調整を行うことも大切です。
例えば、
などが考えられます。
現在の学校へ毎日通い続けることだけが唯一の方法ではありません。
本人の症状や生活状況によっては、定時制高校や通信制高校、サポート校などの柔軟な学習環境を検討することもできます。
一方で、学校を変えること自体がODの治療になるわけではありません。
医療機関で必要な診療を受けながら、本人への身体的・心理的な負担を減らし、学習を続けやすくするための環境調整の一つとして高校選びを考えることが重要です。
まとめ
今回は、起立性調節障害(OD)の特徴や、高校進学で気を付けたいポイント、ODのあるお子さんが検討できる高校について解説しました。
ODでは、朝起きられない、午前中に体調が悪い、立ちくらみや頭痛があるなど、さまざまな症状がみられることがあります。
こうした症状は本人の努力不足や生活態度だけによるものとは限りません。
一方で、「朝起きられない」「学校へ行けない」といった症状だけでODと判断することもできないため、症状が続いて学校生活や日常生活に影響している場合には、小児科などの医療機関へ相談しましょう。
高校選びについては、全日制高校、定時制高校、通信制高校など、複数の選択肢があります。
特に、
などを確認し、本人の体調や希望に合った環境を選ぶことが大切です。
学研WILL学園では、通信制高校で学ぶ高校生に対し、通学・在宅・オンラインなど複数の方法で学習を支援しています。
ODなどによって毎日の通学に不安がある場合にも、本人の状況に合わせた学び方について相談できます。
医療機関で必要な治療を続けながら、本人にとって無理のない学び方を探していきましょう。
学研WILL学園では、不登校経験のあるお子さんや、学校生活・人間関係・学習面に不安を抱えるご家庭に寄り添い、今の状態に合った学び方や居場所を一緒に考えています。
今のお子さんに合った学び方や居場所について悩まれている方は、まずは一度ご相談ください。