お子様が学校の勉強についていけないのは学習障害が原因かもしれないと心配になったことはありませんか?
また、学習障害をどのように確認すればよいのか、どのように接すればよいのか分からないという保護者の方もいるかと思います。
この記事では、学習障害の基本的な特徴や確認方法に加え、学習障害を持つ子どもへの具体的な接し方やサポート機関についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
学習障害(LD)とは

学習障害(Learning Disabilities: LD)とは、知的発達に遅れがないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」などの特定の学習能力に遅れがある状態のことです。
学習能力の遅れは脳の情報処理の特性によるもので、人によって症状の程度は異なります。では、学習障害の具体的な原因とは一体なんなのか。また、学習障害にはどのような特徴や種類があるのかを以下でご紹介します。
※学習障害は正式には「SLD(限局性学習症)」と呼ばれますが、DSM-5-TR以前の診断名である「学習障害」が一般的に使われているため、本記事では「学習障害」として表記します。
学習障害(LD)の原因
学習障害の原因については、現在も完全には解明されていませんが、以下の要因が影響していると考えられています。
脳の情報処理における不具合
学習障害は、脳の特定の部位における微細な機能障害によるものとされています。視覚や聴覚から受け取った情報を整理し、関連付けて表現する過程で、不具合が生じることが原因とされています。このような脳の情報処理の不具合が、学習のつまずきを引き起こします。
中枢神経系の機能障害
体全体の動きや考える力、感覚をコントロールするなどの中心的な役割を担う中枢神経系の発達や機能に問題がある場合、学習障害のリスクが高まると考えられています。特に出産直後の時期に子どもの脳にダメージがあると、学習障害のリスクが高くなります。具体的には、低出生体重や早産、出生時の酸素不足などがその例として挙げられます。
遺伝的要因
学習障害は、家族内で遺伝的に影響を受ける場合があることが研究で明らかにされています。そのため、家族内で特定の学習の遅れが見られる場合、遺伝的な影響が考えられますが、環境要因も大きく関わるため、専門的な評価が欠かせません。
環境要因
学習障害の原因には環境的な要因も関わることがあります。例えば、幼少期に新しい経験や学びの機会が少ないことによる脳への刺激不足、大気汚染による有害物質の影響、または妊娠中の喫煙やアルコール摂取といった胎内環境の影響が、学びの能力に影響を及ぼす可能性があるとされています。
特定の学習分野における発達の偏り
読む能力は発達しているのに、書く能力が遅れていたり、計算が極端に苦手だったりすることがあります。これは脳の成長や働きにばらつきがあることが原因となる場合があります。
学習障害(LD)の種類
学習障害の種類は主に以下の3つが代表的なものになります。
ディスレクシア(読字障害)
ディスレクシア(読字障害)は、知的発達に問題がないにもかかわらず、読み書きの遅れが見られる学習障害の一つです。
特徴として、文字と音の関連を理解する「音韻認識」が苦手なため、単語を読み間違えたり、読解に時間がかかったりすることがあります。
ディスグラフィア(書字表出障害)
ディスグラフィア(書字表出障害)は、知的発達には問題がないものの、文字や文章を書く能力に遅れが見られる学習障害の一つです。
文字を正確に書いたり整えたりするのが難しく、スペルの記憶が苦手だったり、筆記速度が遅かったりするほか、字の形や大きさが不揃いになるといった特徴があります。
ディスカリキュリア(算数障害)
ディスカリキュリア(算数障害)は、知的発達には問題がないものの、数学や数の学習に遅れが見られる学習障害の一つです。
具体的な特徴として、数字や数の概念を理解しづらい、計算の手順を覚えにくい、簡単な足し算や引き算でミスを繰り返すといった傾向があります。
学習障害(LD)を確かめる方法

学習障害は小学校低学年から高学年の間に学習の遅れが目立つことが多く、怪しいと感じた場合は正確な診断を受けることが大切です。それでは、どのようにして学習障害を確かめるのでしょうか。以下では学習障害を確認するための具体的な手順と、その診断基準についてご紹介します。
学習障害が診断されるまでの流れ
学習障害を診断するには、子どもの学習状況や行動の特徴を総合的に評価してもらう必要があります。診断に至るまでの一般的な流れは以下の通りです。
1.専門機関の受診
子どもの学習や行動に関して気になることがあれば、まずは学校の担任やスクールカウンセラー、または小児科医や児童精神科医に相談しましょう。家庭での様子や学習の困難を具体的に伝え、専門機関への紹介を依頼します。その後、発達支援センターや児童精神科、小児神経科、臨床心理士がいる施設などで受診し、発達検査が行われることが一般的です。
2.発達検査
発達検査では、子どもの知能や思考力を評価し、学習の遅れが他の知的障害や発達障がいによるものではないかを確認します。その際、WISC(知能検査)を使って知能指数(IQ)を測定し、知能に問題がない場合は学習障害の可能性が高まるため、さらに詳しい検査が行われます。
3.学力検査
学力検査では、子どもの学習能力を調べ、読む、書く、計算するなどの特定の分野で遅れがないかを確認します。検査の結果、特定の分野で大きな遅れが見られる場合、学習障害の可能性が高いと判断されます。
4.行動観察・インタビュー
行動観察やインタビューでは、子どもの学習や生活での困りごとを確認し、それが特定の場面で学習障害に関係しているかを評価します。これらの情報を総合して診断が進められます。
5.診断と評価結果の報告
すべての検査結果と観察をもとに、専門医や心理士が学習障害の有無とその特徴を評価します。学習障害が確認されると、診断名がつけられ、具体的な支援方法や必要なサポートが提案されます。
学習障害の診断基準
学習障害は、DSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル第5版)やICD-10およびICD-11(国際疾病分類)の基準に基づいて診断されます。これらの基準では、学習障害は脳の働きに関連する問題とされ、読み、書き、算数など特定の分野での遅れが、学校や日常生活に影響を及ぼす状態とされています。
さらに、この遅れが少なくとも6か月以上続き、通常の支援では改善しない場合に学習障害と診断されます。
学習障害(LD)の子どもの負担を軽くする親の接し方

子どもが学習障害と診断された場合、どう接すればよいか分からず悩む保護者の方は少なくないと思います。そこで、保護者が意識すべき接し方をご紹介します。
子どもの得意な部分を認め、自信を育てる
苦手なことにばかり注目せず、得意なことや好きなことを見つけて、それを伸ばすことが大切です。例えば、絵を描くのが好きな子どもには、図を使って学ぶ方法を取り入れるなど、得意な分野を活かして学習をサポートしてみましょう。
学習や生活に計画性をもたせる
子どもが安心して学習や日常生活に取り組めるよう、分かりやすい手順や計画を立てることが大切です。例えば、「この問題を解いたら休憩しよう」のように具体的な順番を伝えることで、子どもが何をすればいいのかを理解しやすくなります。スケジュールや学習の流れを整理して共有することで、余計な混乱を防ぎ、集中力を高める手助けになります。
学習環境を整える
子どもが学習に集中できる環境を整えるために、まずは机や身の回りを整理整頓するお手伝いをしましょう。文房具を使いやすい場所にまとめたり、不要な貼り紙やポスターを片付けることで、集中しやすい環境を作ることができます。
子どもの声に耳を傾ける
子どもの不安や悩みを理解するためには、日常の会話や勉強の様子を通じて、子どもの気持ちや考えを丁寧に聞くことが大切です。
例えば、「どこが一番難しい?」「ここがやりづらい?」と具体的に問いかけることで、子どもが困っている部分を把握しやすくなります。
周囲と協力しながらサポートする
学校と積極的に連携し、担任の先生やスクールカウンセラーに相談することが大切です。子どもの特性に合った学び方や学習環境の工夫について具体的なアドバイスを受けることで、学校でのサポート体制が整い、子どもが安心して学習に取り組める環境が作れます。
自己肯定感を高める工夫をする
子どもの自己肯定感を高めるには、日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねることが大切です。「やればできる」と実感できるよう、無理のない目標から始め、「ここがよくできたね」と具体的に褒めることで、達成感を少しずつ感じられるようサポートしましょう。
学習障害(LD)の子どもをサポートする機関

ここまでの内容で、学習障害についての理解が深まったのではないでしょうか。最後に、学習障害の子どもをサポートする支援機関や教育環境についてご紹介します。
特別支援教育
特別支援教育は、学習障害をはじめとする発達障がいのある子どもに対し、それぞれの特性に合わせた教育を行う仕組みです。通常学級での授業に加え、個別指導計画(IEP)の作成や専門教員によるサポート、保護者や専門機関との連携を通じて、子どもが安心して学び、自信を持てる環境を整えています。
スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、学校で子どもの学習や心の健康に関する相談を受ける専門家です。学習障害のある子どもが学校生活で感じる困りごとに寄り添い、心理的な支援や学習環境の調整を通じて、子どもが安心して学べる環境を整える役割を担っています。
通級指導教室
通級指導教室は、通常学級に通う子どもが特定の時間に個別指導を受ける仕組みです。学習障害の特性に合わせたサポートを行い、言語や計算、社会性などの課題に対して少人数または個別指導を提供します。また、通常の授業に戻る際のサポートも充実しており、子どもがスムーズに学び続けられる環境を整えています。
フリースクール
フリースクールは、学習や学校生活に困難を感じる子どもたちに、自分のペースで学べる柔軟な環境を提供する学びの場です。学習障害を持つ子どもにも選ばれやすく、個別に対応した教育プログラムで、子どもの特性や興味に合わせた学びが可能となっています。このような学びを通じて、自己肯定感や自主性を育むことを目指しており、学業の進行だけでなく、探求学習や体験型活動にも力を入れています。さらに、専門のスタッフやカウンセラーが常駐し、心理的・生活面でのサポートも充実しています。
弊社が運営するフリースクール学研WILL学園では、学習障害を抱えるお子様の入学相談、キャンパス見学などをいつでも受け付けています。お子様の状況に合わせて適切なアドバイスもさせていただきますので、学習障害でお悩みの場合はぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
学習障害の基本的な特徴から具体的なサポート、支援機関についてご紹介しました。
学習障害を持つ子どもにとって、適切な支援と環境を整えることは非常に大切です。
家庭、学校、専門機関が連携してサポートを行うことで、子どもの成長を助け、可能性を広げることができます。
子どもと焦らずしっかり向き合いながら、少しずつ学習の改善に向かうようサポートしていきましょう。